企画アイデアの仮説生成に役立つ行動観察
アイデアの仮説生成に役立つ行動観察
新しいサービスや業務改善のアイデアを生むためには、従来の枠組みにとらわれない新しい視点が不可欠です。
アイデアの仮説を得るためのアプローチとして、実際の現場からの課題やニーズを捉えることは、サービス開発の企画や業務改善のアイデアにとても重要です。行動観察によるリサーチでは、現場に赴いて人の行動を深く観察することで、アンケートやインタビューでは得ることのできない、言葉にならない本音や自覚のない無意識な行動から、潜在的な課題やニーズを発見し、アイデアに役立てることが期待されています。
行動観察のリサーチポイント
行動観察を用いた企画アイデアの仮説生成の仕方とは、正しい事実(ファクト)から、洞察(インサイト)を得て、従来の枠組みに嵌らない新しい枠組みから見つめ直し(リフレーミング)、最終的なアイデアを生成します。本コラムでは行動観察のリサーチを行う上で、重要となるポイントをご紹介いたします。
事実を捉える「×見る→○観る」
潜在的な課題やニーズから企画アイデアを練る行動観察にとって一番重要なポイントは、事実(ファクト)となるデータを収集することです。実際に現場に赴いて調査を行うことをフィールドワークと呼びますが、フィールドワークは、見聞の「見る」ではなく、観察の「観る」といったマインドでリサーチを行う必要があります。
「見る」とは、意図がないまま視覚的に目で捉えて認識する漢字として用いられますが、「観る」は、ある実態を理解するために意識的に目を向ける時に用いられます。行動観察では、観察対象の「事実を観る」ことがリサーチの基本です。表面的な動作だけでなく、対象者の表情や動き、周囲の環境まで細かく観察し、事実だけを客観的に記録します。先入観を排除し、ありのままの現場を捉え、伝える姿勢が、ここでは重要となります。この事実に基づいた一次データの収集のことをファインディングと言います。
文脈を捉える「×聞く→○聴く」
次に行動観察のリサーチにおいて重要なポイントは、観察対象者の発言や会話に対して「聞く」のではなく、背景や文脈を意識して「聴く」ことが求められます。現場の観察対象者から「聴く」ことで、観ただけでは理解ができなかった行動の背景、理由となった考え方や経験まで掘り下げ、その人が大切にしている価値観を明らかにし、行動を理解します。フィールドワークでは観察だけを行うものでなく、インタビューや会話を通して、積極的に文脈理解のためのヒアリング=「聴く」を行うことが重要となります。聴くためのポイントは、相手の話に対して、共感し、理解をしようとする姿勢である傾聴です。現場では傾聴に徹し、リサーチを行う側の意図や解釈を含んだヒアリングは事実(ファクト)ではないため避けることが必要です。
第三者の視点で俯瞰する
対人関係から引き出される気づきの仕組みを整理した心理学的フレームワークである「ジョハリの窓」では、自己理解、相手から気づかされる理解の他に、自身や相手も気づいていない「未知の窓」が存在するとしています。
3つ目の行動観察の重要なポイントは、この未知の窓を発見するために、第三者が観察を行うことが重要となります。行動観察は第三者の立場(視点)で観察を行うため、観察対象者や対象者の関係者も気づいていない、未知の窓を発見し、新たな企画アイデアに活かすことができます。
第三者として観察を行う側としては、先入観を持たない姿勢で、リフレーミングの頭を働かせながら、リサーチを行うことが、新たなアイデアの発見へと繋がります。
データを統合しギャップを明らかにする
観察で得られた事実や文脈のデータを統合し、現状と理想のギャップを明らかにします。例えば、以前ダイエットをしたいと言われている方のご家庭に訪問し、観察をさせて頂いた時に部屋の中にポテトチップスが散乱している光景がありました。ギャップとは「発言」と「行動」が結びついていない点がこれに該当します。この、ギャップを気づきとして発見することが、アイデアの仮説生成の出発点となります。
ギャップからインサイトを発見する
発言や行動が結びついていないギャップには、なぜそのような発言となったのか、なぜそのような行動になったのか、観察対象者の本音や無意識な行動が隠れています。なぜそうなったのかを、ギャップを起点に分析を行うことで観察対象者の潜在ニーズや本質的な課題を特定しインサイトを導きます。インサイトは行動観察による企画アイデアの創出に重要なポイントです。インサイトを基に企画アイデアを練ることで、潜在ニーズや本質的な課題解決のための企画として役立てることができます。
インサイトからリフレーミングを行う
時に、斬新な企画アイデアを必要とされる場合、観察対象者から導かれたインサイトに対し、従来の価値観におけるフレーム上での着想アイデアでは、斬新さに欠けることがほとんどです。フレームを一度取り払って考えてみることが斬新な企画アイデアの発想に繋がります。この手法は心理学の思考術として、リフレーミングと呼ばれています。
共創ワークショップにより、チームで企画アイデアの仮説を生成する
行動観察を活用した企画アイデアでは、チームにおけるアイデア共創が効果的です。
行動観察は事実に基づいたデータを収集しているため、リサーチを行った人間の解釈が含まれていないRAWデータとしてチームに共有が可能です。そのため、チームメンバーを集め、共創のワークショップを開催することで、アイデアを共創し、企画をすることが可能となります。ぜひ、皆様の会社におかれましても、色々な事実やギャップを発見し、チームでアイデアの仮説を生成してみてください。
オージス総研では、本コラムで取り上げました行動観察の公開講座研修『行動観察入門』を実施しております。ご興味がございましたら、よろしくお願いいたします。
行動観察の公開講座研修

ユーザーインサイト導出の基礎情報となる、ユーザー実態を収集する方法を学べます。行動観察の基礎知識を座学で学び、演習を体験できます。
2025年11月12日公開
※この記事に掲載されている内容、および製品仕様、所属情報(会社名・部署名)は公開当時のものです。予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。
関連サービス
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行動観察入門
本講座1日目は、『行動観察』の基礎知識を座学で学び、ビデオ演習から「事実」と「気づき」を切り分けて記録する演習が体験できます。提示された課題をもとに、2日目はチームに分かれて「現場観察」→「共有」→「課題発見/アイデア発想」の一連の流れが体験できるコースです。
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行動観察コンサルティング
人がその時その場所で実際にどのようにしているか、"わかっているようでわかっていない"行動を観察し、潜在課題やインサイトを導き、施策実行に伴走します。
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