IT人材不足に悩むシステム運用部門へ | 採用だけに頼らない運用自動化の考え方

システム運用部門が抱えるIT人材不足の課題

企業のシステム運用部門では、作業記録の作成、アカウント管理、アクセス権限付与といった定常作業を日々担っています。加えて、月次報告書や運用レポートの作成、障害対応や問い合わせ対応など、業務範囲は多岐にわたります。これらの業務の中には、人の判断や作業が前提となっているものも多く、人が介在・人に依存した運用が残っているケースも少なくありません。

障害発生時には調査や復旧対応、報告資料の作成なども求められるため、担当者の負荷が高くなりやすい傾向があります。業務ごとの作業時間はそれほど長くなくても、対応範囲が広いことで工数が積み重なり、本来注力したい改善活動や企画業務にまで手が回らなくなることがあります。

さらに、業務システムやインフラは24時間365日の安定稼働が求められるため、夜間や休日の対応が発生する場合もあります。担当者によっては残業や待機対応が常態化し、特定の人材に負荷が集中することで、属人化や担当者の疲弊につながることも考えられます。

このように、システム運用部門が抱えるIT人材不足の課題は、「人手が足りない」という単純な問題だけではありません。人に依存した運用業務の存在、多様な定型業務への対応、障害発生時の工数の増加、夜間・休日対応による負荷、改善業務に充てる時間の不足など、複数の要素が重なり合っていることが、課題をより複雑にしていると言えるでしょう。

IT人材の採用でシステム運用の課題は解決できるのか

システム運用部門の人材不足を解消する方法として、まず検討されるのがIT人材の採用です。しかし、採用によって人員を増やすことが、そのまま課題解決につながるとは限りません。

背景の1つとして、IT人材の確保そのものが難しくなっていることが挙げられます。経済産業省の委託事業として実施された「IT人材需給に関する調査」にもあるように、国内において将来的なIT人材不足が課題視されています。少子高齢化による労働人口の減少に加え、DX推進やAI活用の拡大などによってIT人材の需要が高まっていることが要因です。
参考: 経済産業省委託事業-IT人材需給に関する調査-調査報告書 2019年3月みずほ情報総研株式会社(外部サイト)

そのため、人材採用を決定したとしても、必要なスキルを持つ人材をすぐに確保できるとは限りません。求人および選考活動が長期化し、想定した時期に採用できないケースも考えられます。システム運用部門では人材不足による負荷がすでに発生していることが多く、採用活動の期間中も既存メンバーで業務を継続しなければなりません。

また、採用に成功した場合でも、すぐに戦力化できるとは限りません。システム運用には、自社システムの構成や運用ルール、障害発生時の対応手順など、企業固有の知識が求められます。そのため、新たな人材が十分に業務を担えるようになるまでには、一定の教育期間や引き継ぎ工数が必要になるでしょう。

さらに、育成が進んだとしても、その人材が長期的に定着するとは言い切れません。よりよい条件の企業への転職やキャリアチェンジなどにより退職する可能性もあります。採用活動には求人広告費や人材紹介手数料、選考工数、人件費などのコストが発生します。採用や育成にかけた時間やコストが十分に回収できないまま、再び採用活動が必要になるケースも考えられます。

そして、たとえ人材不足を解消できたとしても、システム運用の本質的な課題がすべてなくなるわけではありません。システムは安定稼働が求められるため、夜間や休日の監視、障害発生時の対応といった業務は継続して必要です。人員が増えれば負荷を分散できる可能性はありますが、対応そのものがなくなるわけではありません。

このように、IT人材の採用はシステム運用部門の課題解決策の1つではあるものの、採用難や育成期間、離職リスク、コスト負担といった課題も伴います。また、人材不足が解消されたとしても、24時間365日の運用体制が求められる状況は変わりません。そのため、採用だけでシステム運用の課題を完全に解決することは難しい可能性があり、業務そのものの進め方を見直す視点も重要になるでしょう。

システム運用におけるIT人材不足の解決方法と期待できる効果

前章で述べたように、IT人材の採用は人材不足を解消する有効な手段の1つです。しかし、採用は重要な選択肢である一方、すべての業務を人が担い続ける前提のままでは、負荷や属人化が残る可能性があります。また、採用に伴うリスクを考慮すると、採用だけでシステム運用部門が抱える課題を解消することは難しいことが想定されます。

そのため、採用と並行して「人が担う業務」と「自動化できる業務」を切り分ける視点が重要になってきます。人材を増やすことだけでなく、人が担う作業量を減らすことを検討するというものです。その1つとして挙げられるのが、システム運用自動化です。

システム運用自動化とは、人手で行っていた運用作業の一部をシステムによって代替することを指します。

定常作業や障害対応、レポート作成といった定型業務を自動化することで、既存のIT人材が担う作業工数や運用負荷の軽減が期待できます。さらに、自動化によって創出された時間を、障害予防や運用品質の向上、業務改善、企画業務などの付加価値の高い活動に充てられるようになる点も、システム運用自動化の効果の1つと言えるでしょう。

自動化しやすい運用業務の例

システム運用にはさまざまな業務がありますが、その中には比較的自動化しやすい業務が存在します。手順が決まっているもの、発生頻度が高いもの、判断分岐が少ないもの、記録・通知・集計が中心であるものがこれにあたります。具体的に見ていきましょう。

  • 定常作業
    作業記録の作成やアカウント登録、アクセス権限付与といった定常作業は、あらかじめルールや手順が決まっていることが多く、自動化の対象になりやすい業務です。
  • 障害対応
    障害対応においても、障害が発生した際の電話やメールによる通知、関係者へのアラート送信などは、自動化できるケースがあります。また、サーバーログの収集や指定条件に応じたサーバー再起動、インシデント管理システムへの登録なども、自動化によって人手を介さずに実施できる場合があります。
  • レポート作成
    月次報告書や障害対応記録といったレポート作成業務も、自動化による効率化が期待できます。運用データや監視データの集計を自動化することで、担当者が手作業で情報を収集・整理する負担を抑えられる可能性があります。
  • 夜間・休日対応
    夜間や休日に発生する一部の運用業務も自動化の対象となります。定型的な通知や設定変更、あらかじめ決められた手順に沿った一次対応などを自動化することで、夜間・休日対応の負荷軽減につながることも考えられるでしょう。

自動化後に人が担うべき業務

一方で、システム運用のすべてを自動化できるわけではありません。

予期しない障害への対応や、システム全体への影響を考慮した意思決定、事業環境の変化に応じた運用方針の見直しなどは、人による判断が求められる業務です。

そのため、自動化によって生まれた時間は、人でしか対応できない業務に活用することが重要と言えます。例えば、運用品質の改善や業務プロセスの見直し、新しいシステム導入の検討、障害の再発防止策の立案などが挙げられます。

システム運用自動化の目的は、人を不要にすることではありません。定型業務や繰り返し作業をシステムに任せることで、限られたIT人材がより価値の高い改善業務や企画業務に注力できる環境を整えることにあります。結果として、人材不足への対応と生産性向上の両立を目指しやすくなるでしょう。

IT人材の観点から考える、システム運用自動化の際の注意点

システム運用自動化は、IT人材不足への対応や生産性向上が期待できる有効な手段の1つです。しかし、対象業務が曖昧なままツールを導入したり、導入したものの現場の運用プロセスと合わなかったりすると、期待する効果が得られない場合があります。導入を成功させるためには、現状の業務を正しく把握し、自動化の対象や進め方を検討するとともに、導入後に発生し得る課題についても事前に認識しておくことが重要です。

まず取り組みたいのが、運用業務の棚卸です。システム運用の現場では、特定の担当者しか対応方法を知らない業務や、経験や勘に頼って行われている業務が存在することがあります。そのため、自動化を検討する際には、どのような業務が行われているのかを整理し、属人化している業務や暗黙知となっているノウハウを「見える化」することが求められます。

そのうえで、自動化すべき業務の優先順位を決めることが重要です。一般的に、自動化の効果が得られやすいのは、手順書やルールが整備されている定型業務です。例えば、アカウント登録やアクセス権限付与、定期レポート作成などのように、決められた手順に沿って実施する「人でなくてもよい作業」は、自動化との相性がよいと考えられます。

一方で、洗い出したすべての業務を一度に自動化しようとすると、多くの時間や労力が必要になります。導入範囲が広がるほど検討事項も増えるため、まずは工数が大きい業務や定型化しやすい業務など、一部の作業から段階的に取り組むことで、導入効果を確認しながら進めやすくなるでしょう。

また、ツールを導入した後に現場が継続的に利用できるかどうかという視点も欠かせません。自動化ツールの操作が複雑だったり、既存の運用プロセスと合わなかったりすると、かえって現場の負担が増える可能性があります。そのため、導入前には運用担当者が使いこなせる仕組みかどうかも確認しておくことが望ましいでしょう。

加えて、自動化された業務でトラブルが発生した場合の対応についても検討しておく必要があります。自動実行された処理が想定どおり動作しなかった場合や、連携先システムの変更によって自動化処理が停止した場合などに備え、監視方法や復旧手順をあらかじめ整理しておくことが重要です。

費用面についても慎重な検討が求められます。運用自動化では、ツールの導入費用だけでなく、運用費用や保守費用も発生します。また、現場担当者への教育や運用ルールの整備など、導入後の教育コストが必要になる場合もあります。そのため、初期費用だけで判断するのではなく、運用開始後を含めた総合的なコストで評価することが重要です。

このように、システム運用自動化を進める際には、自動化対象の選定から導入後の運用体制、費用面まで幅広い観点で検討する必要があります。まずは業務を見える化し、自動化による効果が得られやすい業務から段階的に取り組むことで、自社に適した形で運用自動化を進めやすくなるでしょう。

まとめ

システム運用部門が抱えるIT人材不足の課題は、単純に人員を増やせば解決できるものではありません。採用活動の長期化や育成期間、離職リスクに加え、採用後も24時間365日のシステム運用が求められる状況は変わらないためです。また、人材採用で解決する課題がありながら、これにより生じる懸念が出てくることも念頭に置く必要があります。

そのため、人材採用だけでなく、システム運用自動化ツールの導入も課題解決の選択肢の1つとして検討する価値があるでしょう。人材採用と自動化を別個のものと捉えるのではなく、組み合わせて考えることが大切です。人材採用だけでは補いきれない、人手で行っている定常作業や障害対応、レポート作成などの一部を自動化することで、IT人材不足によって生じている運用負荷の軽減につながる可能性があります。

また、システム運用自動化によって得られるメリットは、既存のIT人材の負荷軽減や人材不足への対応だけにとどまりません。定型業務に費やしていた時間や工数を削減できれば、運用品質の向上に向けた改善活動や、新たな施策の企画・立案に取り組む余地も生まれます。さらに、企業の競争力強化につながる新たなビジネス検討の活動につながるケースもあるかもしれません。

一方で、システム運用自動化はツール導入を決めれば終わりではありません。自動化の対象選定や運用ルールの整備など、自動化に際して人が担うべき役割も存在します。導入後は、ツールと人それぞれの強みを活かした役割分担を行い、業務全体の最適化を図ることも重要です。

自社の運用業務のうち、どの作業が自動化の対象になり得るかを検討する際は、事例や効果を参考にすると整理しやすくなります。運用自動化を検討されたい方は、関連資料をご活用ください。

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2026年8月4日公開
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