Safety-Ⅱを用いた安全性向上支援 ~レジリエンス工学に基づく安全の取り組み~

「安全」の取り組みにおける課題・背景

我々が現場の安全性に関して受けるご相談で特に多いのが、「事故やヒューマンエラーの原因を調査し改善することで事故件数が減ってはいるものの、ゼロにはならず困っている」というものです。昨今注目されている事故を減らす考え方として、Safety-ⅠとSafety-Ⅱの2つの考え方があります。
これらはレジリエンス工学の分野で発達してきた考え方です。オージス総研ではSafety-ⅠやSafety-Ⅱの考え方を参考にしながら、現場の安全性向上の支援をしています。

Safety-ⅠとSafety-Ⅱ

Safety-Ⅰとは: 失敗から学ぶ、ミスを減らす

Safety-Ⅰとは、「失敗の数を可能な限り少なくする」安全に対する考え方で、何か事故・事象が発生してから対処します。
企業の「安全」の取り組みにおいては、「発生した事故・事象の原因を調査し、対策を実施する」ことが主流です。

Safety-Ⅰの特徴

Safety-Ⅰの特徴には下記のようなものがあります。

  • 「事故が起きたとき」の対応事例を対象にする
  • 人間が起こす行動が事故原因のきっかけになり得るという考え方
  • 標準マニュアルを作成することで、誰もが同じような安全対策を実施できる

Safety-Ⅰを進めていく際に行き当たる壁

実際の事故原因からどうすべきかを考えていきますが、進めていくと下記のような課題が出てきます。

  課題①: 標準マニュアルを作成しようとしてもすべてのパターンは網羅できず、記載されていない事象には対処できない
  課題②: 仮にすべてのパターンを網羅できたとしても、従業員がそのすべてを身に付けるのが困難
  課題③: 事故やイレギュラーの発生件数は少ないため、学習機会が限られる

これらの課題に対応するための考え方として登場したのがSafety-Ⅱです。

Safety-Ⅱとは: レジリエンス工学に基づく考え方、成功から学ぶ、成功を増やす

「失敗の数を可能な限り少なくする」Safety-Ⅰに対し、Safety-Ⅱとは「成功の数を可能な限り多くする」安全に対する考え方で、必要に迫られる前、または問題が大きくなる前に先取りして対処します。Safety-ⅡはSafety-Ⅰだけでは足りない領域をカバーするために、レジリエンス工学の分野で出てきました。
事故・事象が発生したときに、普段安全に行動できているのはなぜかを理解することに主眼を置きます。

Safety-Ⅱの特徴

Safety-Ⅱには下記のような特徴があります。

  • 「日常のうまくいっている」事象を対象にするため、事例や実践教育機会が豊富[図1]
  • 人間は柔軟に対処することで、安全な仕組を維持する役割を担うと考える
  • 標準マニュアルに記載がなくうまくいった行動は現場状況への適応とみる
Safety-Ⅰでは行き当たってしまっていた壁も、Safety-Ⅱの考え方によって乗り越えることができます。
Safety-ⅠとSafety-Ⅱの考え方はどちらか一方を採用するというものではなく、どちらも参照しながら取り組みを実施することが重要です。

図1: Safety-ⅠとSafety-Ⅱで対象とする事象

【出典】
Hollnagel, E., Wears, R. L., & Braithwaite, J. (2015). From Safety-I to Safety-II. A white paper, the University of Southern Denmark, University of Florida, USA, and Macquarie University, Australia.

Safety-Ⅱ実践における課題

Safety-Ⅱの考え方を実践する際、以下のようなハードルが考えられます。

  課題①: 従来とは異なる安全に対する捉え方なので、概念や捉え方を理解する必要がある
  課題②: 理解した概念が、自分たちの組織ではどのように適用されるか検討する必要がある
  課題③: Safety-Ⅱの取り組みを、どのようにして日常業務に取り入れれば良いかわからない

Safety-Ⅱの考え方を実践するには、「日常的に、意識することなくうまくいっていること」にも気づき対処できることが求められます。
そのためには、

  • Safety-Ⅱの概念の理解と自組織への適用計画
  • 行動観察を用いた、現場でうまくいっている行動の把握
  • 通常行っている業務をベースに、Safety-ⅠとSafety-Ⅱの考え方を組み込んだ形で仕組化
が重要です。
現場でうまくいっている行動は日々蓄積されていくため、Safety-Ⅰの活動と合わせて、継続的にうまくいっている行動を学習していくことで、安全性向上をねらいます。

行動観察を用いたSafety-Ⅱ実践支援について

Safety-Ⅱは現在も研究や議論がなされている考え方です。オージス総研では、この記事で紹介しているようなSafety-Ⅱに関する解釈と、長年提供してきた『行動観察』をもとに安全性向上の支援を行っています。
安全の取り組みの高度化にご興味のある方、Safety-Ⅱの考え方を取り入れた取り組みにご興味のある方、詳細について知りたい方はお気軽にお問い合わせください。

2021年10月6日公開
2024年2月16日更新
※この記事に掲載されている内容、および製品仕様、所属情報(会社名・部署名)は公開当時のものです。予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

お問い合わせはこちら

関連サービス

関連記事一覧