プロが解く観察力の鍛え方 第1回「気づき力」を高めるために必要な2つのこと

「気づく」とは「それまで気にとめていなかったところに注意が向いて、物事の存在や状態を知る」と定義されます(デジタル大辞泉)。自ら何かに気づくこと、そして気づきの数を増やすことは、状況の変化を察知したり、発想の幅を拡げたりすることにつながります。「気にとめていなかったところに注意が向いて...」とあるように、気づき自体は意識のコントロールで増やすことが可能です。

今回のコラムでは、当社のリサーチ業務にて日々活躍する社員の実体験を通じて「気づき力を高めるために必要な2つのこと」をお伝えします。

「新しいアイデアにつながる気づきを日常から見つけたい。でも、なかなか見つからない。」
「使える気づきを見つけるには、元々の才能やセンスが必要なのでは・・・」
いざ、ご自身でデータを集め始めた時、そんな気持ちを持ったことはないでしょうか。

かく言う私自身も、以前はそう感じていました。しかし、今は違います。気づきは、才能やセンスがなくても、鍛えれば集められるようになるのだと実感したからです。本コラムでは、私がどのように気づき力を鍛えていったのか、ご紹介したいと思います。

気づきに出会えないのはセンスや行動範囲の違いだと思っていた

まず、私自身のプロフィールを簡単にご紹介します。
保育園児2人の子育て中で、基本在宅、かつ時短勤務です。仕事の実務経験が浅いため、経験を積んで気づき力を上げたい想いを持ちつつも、時間の都合で調査現場へ行きにくい状況にもどかしさを感じていました。

今年の初め、チーム内スキルアップ活動として、コロナ禍の生活者インサイトを出すために、一定期間、日々の出来事から気づきを収集しました。当初の私は、「これは!と思う気づきに出会ったらメモをしよう」の受け身の姿勢。しかし、行動範囲は家と保育園の往復+近所の公園程度です。狭い行動範囲の中で、あまり数は集まりませんでした。

他のメンバーの気づきを見て、
「さすが、感度がいいな」
「街に出れば、こんな気づきに出会えるんだ」
と感じていました。多彩な気づきを出せるのは、センスや行動範囲の違いだと捉えていたのです。

そんな折、観察力アップの1つとして、プロのイラストレーターから絵の描き方を学ぶ機会がありました。その後もトレーニングのために、受講メンバーで毎日絵を描き続けることに。定例ミーティング内の7分間程度でしたが、日々続ける中で、絵を描く視点がモノの観察に応用できると実感し、気づき方にも変化があらわれたのです。

気づき力を鍛えるために必要な2つのこと

私自身の変化から学んだ、気づき力を鍛えるために必要なことは下記の2点です。

1. 見かたの方法(工夫)を知ること
2. 学んだ工夫を日々の練習で実践し続けること

知るだけでもなく、やみくもにやってみるのでもなく、「ちゃんと知って、ちゃんと練習する」がポイントであると考えます。では、1つずつ詳しくご説明します。

1. 見かたの方法(工夫)を知る

描画から応用した例として1つ紹介します。それは、「1点に集中して、細部まで見る」という見かたです。

人の顔を描く課題で、まず目を描こうと決めました。そして、他のパーツを隠し、今、見えている目に集中します。すると、二重の形、まつ毛の生え方、黒目に映る光 等、顔全体の一部として目元を描いていた時には気づかなかったところにまで気づき始めたのです。

なぜ、最初は気づかなかったのでしょうか。視野に入るもの全てを眺めると、膨大な情報量になります。すると、絵を描くプロセスが、

1. 目の前のものを見る前に、「目ってこうだな」という思い込みが頭に浮かぶ
2. その確認として対象物を見る
3. 「やっぱりそうだった」と納得したことを絵にする

という流れになっていたのです。しかし、他のパーツを隠し、目の前にあるものに集中する状況を作ったことで、思い込みが使えなくなり、今まで見えなかったものが見えてきたのだとわかりました。

2. 学んだ工夫を日々の練習で実践し続ける

私自身、絵画講座を受けた時点で、見かたの方法をわかったつもりになっていました。しかし、今振り返ると、それを日常のモノの見かたにまで反映できていなかったと感じます。自分の身になっていなかったのです。講座受講後、毎日、絵を描き続けることで、「よく見れば、いくらでも発見はある」と実感しました。その体験を繰り返すうちに、新たな発見のためによく絵を観察するようになっていったのです。

そして、気づき収集も、「気づいたら書こう」という受動的な見かたから「気づこう」という能動的な見かたに変わっていきました。「気づきは待っていても出会えない、自分から探しに行くことで発掘できる」と日々のトレーニングから学んだのです。

繰り返される日常から気づきを発掘する

「代わり映えのしない生活には気づきがない」と思っていましたが、見かた次第で見つけられるはずです。早速、実践してみました。

保育園の送迎時から気づきを発掘してみることに。毎日通っている門から教室前までのルートの中で、園庭に焦点を当て、絵画同様に集中して見てみました。

園庭で最初に気づいたのは、花壇に咲くチューリップでした(当時は3月)。昨日も咲いていたはずですし、去年も咲いていたはずです。しかし、全く気づいていませんでした。それは、今まで園庭を通る時、「教室にいる子供たちはどんな様子かな」「先生に○○を伝えておかないと」など、教室のことばかり考えており、見ようとしていたものも教室の中だけだったからです。園庭は視界に入っていたものの、見る意識がなかったので、そこあるもの1つ1つがわかっていませんでした。園庭を見る対象として意識したことで、今までぼやけていたものがありありと見えるようになりました。

これらの出来事から、「そもそも、チューリップが最初に目にとまったのはなぜ?」「その時の気持ちはどうして生まれたのだろう」と考えました。まず、自分の状況を振り返ると、以前は、街・店頭の大々的な飾りつけやシーズンごとのイベントから、「次はこの季節」という四季の変化を気づかされていました。しかし、街へのおでかけも、イベントもなくなり、家と保育園との往復の日々になったことで、派手な風物詩に触れる機会が減っていました。

そのような背景から、「まず、チューリップを見つけたのは、カラフルなものが一層鮮やかに映ったからではないか。そして、単調な日々の中で変化に飢えていたために、久々に感じた冬から春への移ろいが、より心に沁み、春の息吹を感じたことで、こわばっていた心がほぐれて、気持ちが一気に高まったのではないだろうか」と自分の心の動きを掘り下げることができました。

繰り返される日常や、些細な出来事の中でも、とことん丁寧に見つめることで、今まで気づかなかった事実を見つけ出せました。そして、その事実を深く考えることで、見過ごしていた自分の状況や欲しているものを実感するに至りました。

気づきは出会うのではなく見出すもの

「気づき」は見かたを工夫し、日々練習することで集められるようになります。私のように、時間や行動の制限があっても、日々コツコツと積み重ねていけば問題ありません。そして、気づきを見出すには「この場から気づきを見つけよう」という能動的な姿勢が大切です。工夫を学ぶこと、練習することの両方を実践することで、その姿勢が身になっていくと考えます。

(2021年12月16日 株式会社オージス総研 行動観察リフレーム本部 大出 絢香)

「何かに気づくのは見かたの工夫」というのは、至極当たり前のように感じられると思います。問題なのは、人間の認知的・社会的な仕組みは、大人になるにつれ「よく見る労力を節約する」ようにできていることです。気づきの量や種類を増やすためには、気づくための仕組みの理解とともに、新しい癖を身に着けるための練習・実践が必要です。

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