「気づき」について考える【後編】
2016.12.02 行動観察リフレーム本部メンバー
前編では「気づき」とはどういうものかについて深めていきました。後編はどうしたら「気づく」ようになるのかについて深めていきます。
――「気づき力を付けたい」という方もいらっしゃるかと思います。どのようにしたら「気づく」ようになるのでしょうか。
池田
確かに、クライアントからもそういう声をいただくことはありますね。やはり自分のフレーム外のことがあると気づきがおこりますよね。普段と違う環境に行くとか、普段と違うことをするとか。
松波 晴人(以下「松波」)
例えば外国に行くとすごく違和感を持つじゃないですか。その違和感を持った時に、よくあるのは「変な人論」。この人がおかしい。特別だという考え方。「おかしい人だから」と結論づけるのではなくて、一度受け入れて、どうしてなんだろう?どうして違うんだろう?と考えると「気づく」。学ぶ気持ちを持たず、認知的不協和を回避ばかりしていると、人は気づけない。
みんな忙しすぎてAかBかという結論をすぐ出さないといけない状況なんですよね。Aかもしれないけど、Bかもしれない。と思い続けててもいいじゃないですか。そのための元気とか余裕が必要なんじゃないかな。
三谷 信広(以下「三谷」)
「モチベーション」とか「余裕」以外にも重要な要素はありますよね。
池田
そうですね。余裕が無くても、モチベーションのレベルが低くても気づく人は居ますからね。
松波
受け入れている情報量が違うんでしょうね。同じ場に居ても、「気づいた?」と聞いても「いや、全然気づかなかった」ということってあるでしょ?気づいている人は受け入れている容量が多い人。
榊原 俊行(以下「榊原」)
確かに、取れるファクトが多ければ、それに付随する違和感が増えてくる可能性はありますよね。
松波
あと学ぶつもりのある人。「まだまだ、学ぶぞ!」という人。逆に「俺はすごい、完璧だ」という人は、学ばなくていい、気づかなくていい、となりがち。
池田
学びに貪欲な人、好奇心のある人ってことですね。
松波
あとは、人間の好きな人というのもあるかもしれませんね。
小野 恵(以下「小野」)
私は逆に「この人苦手だな」と感じる時も関心を持っていられます。「この人の何が苦手なんだろう」と思って、その人の気になる行動や理由を探っていくことをしたり。
一同
(笑)
小野
私、自分と価値観が合わないタイプの人のブログを読んだり、インスタグラムを見たりするのが、大好きなんですよ(笑)
松波
それ、すごいね!普通出来ないよ。面白い!
小野
別にそれですごいストレスが溜まるわけじゃなくて、面白いんですよ。イライラしたくてそれを見る(笑)
松波
認知的不協和への耐性がめちゃめちゃ強いね。
矢島 彩子(以下「矢島」)
あと、好きでも嫌いでもなく、無関心だからといっても、気づくことができると思うんです。
榊原
自分の職場や業務に関心がないはずがないのに、クライアントは気づいていないということがあるわけじゃないですか。三谷さんが観察して「こんなことがありましたよ」って気づきを出したら、「えっ!そんなの気づかなかった」となることがよくありますよね。
三谷
そこなんですよ。意欲ももちろん重要だけど、結局、意欲をもとにやっていることは「より深く考えること」。事実に対して何か考えることを繰り返しやっていく、それが一番の訓練になると思います。
小野
毎日日記を書いたり、強制的に1日1回「気づき」を出すというのも効果がありそうです。あと、気づき力を上げるには、「妄想力」も必要なのかな?と思います。
三谷
公園で、子どもと母親が遊んでいる姿だけ見て、「この人はどうして家じゃなく、あえて公園に来たんだろう?」とか、「どうして母親と子ども2人だけで来たんだろう?」とか、色んな観点で考えていくと面白い。妄想してます、確かに(笑)それが意外に訓練にもなる。
――「気づき」を阻害する要因というのもあるのでしょうか。
松波
ありますね。「こうあって欲しい」という願望と事実が混同されてしまっているために、結論がいつも同じになるとか。あとは単純に自分に余裕がない時は気づけない。
小野
自分1人で考えていると、結構偏ってしまうんですよね。他の人の「気づき」を見たり、コミュニケーションを取ったりすることで「あぁ、そういう見方もあるんだ」って思えて、気づきの幅を広げることができます。
松波
例えばAさんが「気づき」として、「事実」と「解釈」を出し、その解釈について別のBさんが「本当はこういう理由かもしれないですね」とコメントする。するとAさんが、「その解釈の方が実感に合う!」とコメントを返す。そういうコミュニケーションで、いろいろな人の観点が得られて参考になる。
小野
以前、すごくよく気づく人と気づかない人を一緒のグループにして気づきを出し合ったのですが、気づかない人が刺激を与えられて、だんだん気づくようになってくるんです。
三谷
「違和感を持てない」というのは気づきを妨げる要因の1つです。「気づく」というと受動的なイメージがあるんですけど、実は結構、「能動的に」「頑張って」気づいている。集中して「何で?何で?」というモードにしているんです。
榊原
「違和感を持とう!」というモードですね。ということは、気づきは神の啓示みたいに突然降りてくるものではないということでしょうか。
松波
無意識で考えている時に得られる気づきが、"神の啓示(というものがあるとすれば)"かな、と思います。アルキメデスの原理は、「どうしたら王冠に混ぜ物をしているかどうかが分かるか?」という問題をずっと考えていて、風呂でリラックスしている時、お湯が溢れる様子を見て、「これだ!」と繋がった。だから"神の啓示"のためには課題認識ってものすごく大事。
三谷
神の啓示ではないですけど、見る瞬間と気づく瞬間のタイムラグが結構あります。見たあとにしばらく考えて「あぁ、そういうことか」っていう風に。
矢島
ある。すごくわかります。自分が全く知らない世界で大きなギャップを感じて、かつ、それに対してポジティブな感情がある時って、あとから反芻する感覚ってありますよね。
松波
時間差って面白いな・・・確かに僕も最近あったな。中古書店で本を5,000円分買ったんですよ。そこでスピードくじを引いたら1等のクオカード5,000円分が当たって、店員さんが「取り返しましたね」っていってくれたんですよ。その時、買い物がタダになったわけなんだけど、あまり嬉しくなかった。
なぜ違和感を覚えるのかを考えていて、2日後くらいに、こういうことかと分かった。それは得をしたというよりも、5,000円まるまる払う気があったから逆に後ろめたいと感じたんだなと。
榊原
時間差があるのって、面白いですね。逆に時間差がないと気づけないですよね。
小野
その場の興奮とか、そういう感情に支配されているでしょうから、いろいろ落ち着かないと冷静に判断できない気がする。最初は「自分事」で、落ち着いたら客観視できる。
一同
確かに。
――これまでの話を聞いていると、インサイトの回(深めるサミット第1回)とかリフレームの回(深めるサミット第2回)とかと共通する部分があるなと思いました。
松波
すごい発明や、新しい理論の構築って、すべて最初は「気づき」から始まるでしょ。イノベーションとか新しいビジネスも、何らかの小さい「気づき」から最初は始まる。
「リンゴが落ちてきて・・・」(万有引力の法則)とか「溢れるお湯を見て・・・」(アルキメデスの原理)とか、どちらも"場"で見た「それまで結びついていなかった別のもの」からの「気づき」をもとに発想を広げて、「画期的な理論」が生まれていく。「気づき」なくして発見もイノベーションもおこらない。そう考えると「気づき」って、とても大事だとわかりますよね。
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