グルメ口コミサイトに見る、サービスの事前期待と事後評価の重要性
2015.12.08 行動観察リフレーム本部メンバー
どうせ食べるなら... どうせお金を払うなら...
<<美味しいものを食べたい>>
こう思わない人はいないのではないでしょうか。
私は食べることが大好きで、外食にもよく行きます。外食は、家では作れない高度な料理・自分では出せない味が食べられる分、その対価として金銭を払う必要があります。一度行ったことがあるお店なら大体味やお店の雰囲気が分かりますが、初めてのお店では情報も少なく、正直「失敗したな」と思うこともあります。特に自腹でお金を払って、コストパフォーマンスが悪かったときは、がっかり感もひとしおです。
そこで私は、普段飲食店を選ぶ際には、ある『グルメ口コミサイト』を利用しています。そのサイトでは、飲食店に実際に行ったユーザーがそのお店を数値で評価し、それをお店の評価として公表しています。私は外食をする際、このサイトでの評価が高いお店を探して、できるだけ失敗する可能性を減らしています。
つい先日も、家族で旅行に行った際にそのサイトを利用する機会がありました。旅行先から大阪へ戻る際、飛行機の搭乗まで少し時間があり、空港内で食事をすることになったのです。
スマートフォンでグルメ口コミサイトを開き、評価の高いお店を探しました。すぐに目的のお店が見つかり、私たちはそのお店に向かいました。
まず目に入ったのが、壁に貼ってある料理のポスターでした。そこには様々なメニューの写真があり、どれもすごく美味しそうでした。家族で「美味しそう!やっぱりここにしよう」と話し合います。ただ、そのポスターが貼ってある壁はお店の側面のようで、入口に入るには少し壁沿いを歩く必要がありました。少し歩いてお店の入口に着いた後、先ほどと同じポスターが貼ってありました。母が「あ、値段書いてるやん」と言ったのでポスターを再度見てみると、そこには料理の値段の紙が後付けで貼られていました(家族で行っていたので母に払ってもらう気満々の私は全く気づきませんでした)。
特に高価なお店ではなかったため安心してお店に入ると、丁度お昼時を過ぎていたためか店員はあまりいませんでした。入り口正面にいるレジの店員も下を向いて私たちに気づかない様子で、私たちが声をかけるまで気づいてもらえませんでした。
少しがっかりはしましたが、店員に人数を伝え、席が空いているか確かめます。店員は店内を少し見渡した後、「席を片付けますので名前を書いてお待ちください」と言いました。そこで私も席を見てみると、なんとそこには空のお皿が置かれたままになってあるテーブルが5席以上ありました。忙しいお昼時に、手が足りずに2,3席お皿が置かれたままのお店は見たことがあります。しかし、あまり忙しくないであろう14時過ぎにお皿が放置されたテーブルが5つ以上...。あまり見たことがない光景にショックを受けましたが、自分がサイトで見つけて行きたいと言ったお店だけに、「やっぱりやめよう」とも言えません。大人しく名前を書いて、入口付近で待ちました。
しかしそこから待たされること3分。テーブルを1席片付けるだけで私たちは入れるのに、いつまで経っても席に案内されません。結局、「やっぱりやめよっか」と言って店を出てきてしまいました。サイトでの評価が高かったので期待して行ったのに、すごくがっかりした気分でした。
さて、なぜ私はこんなにがっかりしたのでしょう。それは、サービスには「事前期待」と「事後評価」があるからです[1]。
顧客はサービスを受ける前に、そのサービスに対する「事前期待」を持ちます。「期待」とは「予想」でもあります。
今回の場合、私は
サイトで評価の高いお店 = 美味しいし、お店の運営もそんなに悪くない
と事前に予想(=期待)していました。
しかし、実際にはその予想は外れました。このお店は、
①全てのポスターに値段を表記していない(料金を払う立場の人には重要な情報)
②店内に入っても客に気づかない
③忙しくない時間帯にも関わらず、空いたお皿がテーブルに放置されている(しかも5テーブル!)
④1テーブル片付けるだけなのに、3分経っても案内されない
というあまりにもサービスに難があるお店でした。
この実際にサービスを受けたあとにされる評価を「事後評価」と呼びます。
「事前期待」と「事後評価」は、互いに影響し合います。「事前期待」<「事後評価」の場合は、期待より結果が良いということになり、顧客満足が形成されます。しかし、逆に「事前期待」>「事後評価」の場合、期待していたよりも結果が悪くなり、不満やクレームに繋がります。今回のお店は完全に後者の方でした。
私のお気に入りのグルメ口コミサイトは、お店に向かう前にネット上で「事前期待」を先に作ってしまいます。もちろん、これが悪いわけではありません。「事前期待」がある程度なければ、そもそも客はそのお店を訪れません。しかし、サイト上では評価が良くても、実際に行ってみた際のお店側の対応や料理の味が良くなければ、絶対にお店の高評価には繋がらないのです。
要はネットの情報というのは、使い方次第だということです。これはそのサイトに掲載されているお店側はもちろん、私たち客側も同じです。
お店側は、いかにネットでの事前期待を、実際の料理の味やサービスで超えて、事後評価を上げてくるか。客側は、ネット上の情報だけに惑わされず、実際に訪れた際に自分の目で見てきちんと評価できるか。今回私たちは結局このお店で食事をしませんでしたが、きっと実際もそこまで美味しいものではなかったでしょう。
最後に、このお店とは逆の事例をお話しします。
会社帰りに大阪の梅田近くで大好きな餃子を食べた後、友人とデザートでも食べようという話になりました。その時も同じサイトで餃子屋の近くのお店を調べて、評価の高いケーキ屋を見つけました。お店に着くと客は私たちだけで、食べながら談笑していると強面のパティシエのおじさんが席にきました。そして、「著作権で店では出せないんですけどね」と笑いながら有名なアニメキャラクターのチョコレートを無料でサービスしてくれました。
そのグルメ口コミサイトに頼りっぱなしの私は、評価が高いお店ということで「事前期待」でも高評価をしていましたが、ケーキも美味しいし、さらに可愛いチョコレートサービスにより「事後評価」はウナギのぼり。一緒にいた友人と、「これはサイトでも高評価をつけたいわ!」と言い合っていました。
[1] 山岡 俊樹(2010), "サービスデザイン方法に関する一提案", 人間生活工学 Vol.11 No.2(2010.9), pp17
※この記事に掲載されている内容、および製品仕様、所属情報(会社名・部署名)は公開当時のものです。予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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