"画面UIの使いやすさ"が業務効率を変える理由 -システムにユーザビリティを取り入れる意味と実践

1.システムにおけるユーザビリティ向上の重要性

デジタル社会のいま、私たちは日々、数多くのシステムに囲まれて暮らしています。
スマートフォンやパソコンはもちろん、駅の券売機、ATM、セルフレジなど、生活のあらゆる場面でシステムを利用しています。そして業務の現場でも、勤怠管理、経費精算、顧客管理など日々の業務を支える多くのシステムが導入されています。こうした生活に身近なシステムでは、利用者からのフィードバックをもとに改良が重ねられ、使いやすさが追求されています。

では、業務システムはどうでしょうか?

「業務システムが使いにくい」「何度も同じ操作を間違える」「マニュアルを見ても分かりづらい」--こうした声を、システム導入後に耳にしたことはないでしょうか。
業務システムは、業務効率の向上や人為的ミスの削減を目的に導入されるはずのものです。にもかかわらず、現場では「使いづらさ」に起因する非効率やストレスが見過ごされがちです。
多くの企業では「業務システムは業務として使うもの」「業務だから仕方ない」という前提のもと、ユーザーの使いやすさ=ユーザビリティが軽視されてきた経緯があります。しかし、現場に寄り添った画面UI設計・改善を行うことで、ミスやストレスを減らし、結果として業務全体のパフォーマンスを高めることが可能です。

本コラムでは、ユーザビリティの視点がなぜ必要かを考えつつ、行動観察やインタビューなどの現場を理解するための取り組みが開発にどのように貢献できるのか紹介します。
※UIとは、ユーザーインターフェースの意味。画面などユーザーとシステムとの接点をさします。

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2.なぜ、業務システムでユーザーやユーザビリティへの配慮が見過ごされてきたのか

では、これまで見過ごされてきた業務システムに焦点を絞って考えてみましょう。

業務システムは、一般的に「専門性の高い業務を効率よく処理すること」が第一の目的とされてきました。そのため、機能要件が最優先され、実際の使いやすさ(ユーザーの視点に立った設計や操作性の配慮)は、後回しにされがちです。また、「業務だから使わざるを得ない」「マニュアルを読めばなんとかなる」「利用者は社内の人間だから教育すればよい」といった考え方が根強く残っており、ユーザビリティを高めるための時間やコストが、開発プロセスの中で正当化されにくい現実もあります。その結果、ユーザーがシステムに合わせて無理に業務を変えたり、操作方法を調べることや操作自体に時間がかかったり、操作に慣れるまでに多くの時間を要したりするなど、現場では見えづらい「非効率」が生まれてしまいます。

こうした背景から、業務システムのユーザビリティは長らく軽視されてきました。しかし、近年では業務の多様化や人材の流動化により、「誰でもスムーズに使えること」「教育コストがかからないこと」が、システム導入の成功を決める重要な要素になりつつあります。

3.ユーザビリティを取り入れて画面UIを改善するメリット

業務システムにユーザビリティの視点を取り入れて画面UIを改善することで、以下の4つのメリットが得られます。
・入力ミスや操作ミスの減少
・業務へのモチベーションや満足度の向上
・問い合わせ対応や教育の手間の減少と、ユーザーの作業ストレスの軽減
・ROIの向上

入力ミスや操作ミスの減少

最も大きな効果として挙げられるのは、入力ミスや操作ミスの減少です。画面の構成や項目の配置、ラベルの言葉遣いを見直すだけでも、ユーザーの誤操作は大きく減らすことができます。これにより、業務エラーや再確認の工数が削減され、現場全体の生産性向上につながります。

業務へのモチベーションや満足度の向上

ユーザーが適切に操作でき、必要な機能がスムーズに使えることで操作の完了率が上がります。それにより作業ストレスが軽減し、業務へのモチベーションや満足度の向上も期待できます。

問い合わせ対応や教育の手間の減少と、ユーザーの作業ストレスの軽減

問い合わせ対応や教育の手間が減ることも重要です。直感的に操作できる画面UIは、新人や異動者でもスムーズに業務に入ることを可能にし、属人化の解消にも貢献します。さらに、ユーザーの作業ストレスが軽減されることで、業務へのモチベーションや満足度の向上も期待できます。見えにくい「使いやすさ」の改善が、実は組織全体のパフォーマンスにもつながっているのです。

ROIの向上

企業にとっては、これらの効果が投資対効果(ROI)の向上につながります。単に「機能が動く」だけでなく、「誰もがスムーズに使える」ことで、システム投資の価値を高めることができます。

このように、業務システムにおいてユーザビリティを重視することは多くのメリットをもたらします。BtoBでもBtoCでも、使う人の視点に立った「使いやすい設計」が日々の業務やサービス利用を支え、よりよい体験へとつながっていくのです。

4.BtoCシステムでの画面UIのユーザビリティ改善事例と学び

当社ではこれまで、BtoC向けのWebサービスやアプリケーションにおいて、調査を実施し、発見したユーザビリティ課題に対する改善点の報告や開発提案を行ってきました。特に、エンドユーザーの行動観察やインタビュー、アンケート、プロトタイプ検証といった定性的・定量的リサーチを通じて、ユーザーの視点に立った画面UI設計や導線の最適化に取り組んできた実績があります。

524_04_04.jpg たとえば、ある消費者向けサービスでは、行動観察やユーザーインタビューを実施して課題やユーザーの考え方を理解して改良につなげた事例もありました。そのサービスでは、ユーザーがチケットを購入する際に操作に時間がかかり、チケットを購入せずに離脱するケースが多く見られました。そのため、スタッフのサポートがなければ購入を完了するのが難しいという課題がありました。そのアプリケーションに対して行動観察やユーザーインタビューを実施した結果、「画面UIの文言が分かりにくい」「画面遷移が煩雑である」といった問題に加え、「通常のチケット購入では押す必要のないボタンが目立ちすぎており、多くのユーザーが疑問を持たずに自然と押してしまう」という問題が明らかになりました。
行動観察で「押す必要のないボタンを押している」という行動に対し理由を尋ねたところ、多くの人が「自分が使ったことがあるシステムでは、この購入の流れが普通だと思っていた」「目に留まったから押すものだと思った」と回答しました。また、行動観察では押す必要のないボタンを押しても何らかのチケットが出てしまうため、ユーザーが操作を終了してしまう様子も見られました。つまり、ユーザーは「慎重に画面上の情報を読み取って判断する」のではなく、「自分の経験や目立つものを頼りに直感で行動し、それに対するシステムのフィードバックで判断している」ことが明らかになったのです。行動観察によって、ユーザーが戸惑いながら操作している状況や、画面全体の印象により行動が無意識に誘導される状況が浮かび上がりました。その結果、「ユーザーが自然とそう認識してしまう」画面UIの落とし穴が存在していたことが分かりました。

こうした"無意識の行動"や"利用状況下の心理"は、アンケートやインタビューだけでは捉えにくく、実際の利用シーンを観察することで初めて見えてくる重要な気づきです。観察から得られた気づきを踏まえ、ユーザーが直感的に理解しやすいように、ボタン配置の見直し、文言や強調表現の調整、画面遷移の整理を行いました。プロトタイプ評価では、これらの改善により操作時間が従来より短縮される結果が得られました。
このようなBtoC向けシステムから得られたユーザビリティの知見は、業務システムの改善にも十分に応用できます。

5.「人を深く理解する力」で実現する、業務システムの新しいユーザビリティ

業務システムのユーザーも、BtoCのユーザーも、毎日そのツールと向き合う"日常的な利用者"です。操作・業務の効率やストレスに直結するシステムの使いやすさは、生産性に大きく影響します。使う人の立場に立って考えること。業務の背景や目的まで理解した上でシステムを設計すること。それは、単なる「見た目の改善」ではなく、働く人の生産性・満足度を高め、結果的にビジネスの価値を最大化することにつながります。
オージス総研はシステム会社でありながら、ユーザーの行動観察やインタビューを通じて人の行動や背景・価値観の理解に長けた専門チームを社内に有しており、これまで主にBtoC領域でユーザビリティに関する知見を蓄積してきました。この「人を深く理解する力」と「システムの開発力」の両方を社内で連携できることが、私たちの大きな強みです。今後はこうしたシナジーを活かして、お客様へユーザビリティを重視したシステム開発を提供し、BtoC領域だけでなく業務システムにおける業務の効率化などもご支援していきたいと考えています。
ユーザビリティ視点を取り入れたシステムの改善や開発に興味や課題をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。

システムにおけるUIのユーザビリティに関するPDF資料

システムにユーザビリティの視点を取り入れる重要性や事例についてまとめた資料をダウンロードできます。一般消費者向けサービスの満足度向上や、業務効率の向上・問い合わせ削減などに向けたヒントとして、ぜひご活用ください。

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2025年6月13日公開
※この記事に掲載されている内容、および製品仕様、所属情報(会社名・部署名)は公開当時のものです。予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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