新規事業立ち上げの成功ガイド:押さえておくべきポイントと秘訣

1. 新規事業立ち上げにおけるよくあるご相談
新規事業に関してよくご相談いただくのが「何か売れる新規事業を始めろと言われているものの、何から始めたらいいか分からない」というお悩みです。よくよくお話を伺うと、担当の方は自社製品やサービスのエンドユーザーと直接やり取りしたことがなく、保有しているのは購入履歴やデモグラフィックデータ、コールセンター・営業部門・販売代理店などから上がってきた報告に限られていることが少なくありません。
これによって、新規事業を考えようと思っても、事業のアイデアが既存製品の機能追加や改修の域を出ないということが起きているようです。
新規事業立ち上げに関するPDF資料
新規事業開発が成功しない3つの要因やその対策をまとめた資料をダウンロードできます。
貴社の顧客実態を起点にした新規事業立ち上げのヒントにご活用ください。
2. よくある新規事業立ち上げの流れ
お客様からよく伺う、新規事業立ち上げの流れは下記のようなものです。

しかし、この方法で進めていくと陥りやすい罠が潜んでいます。
3. 新規事業立ち上げで陥りやすい罠
皆様の多くがつまずいているポイントは事業のアイデアを考えるところです。実は、スタートの時点でいきなり罠が潜んでいます。特につまずきやすいポイントは大きく2点です。
すぐにアイデア出しを始めてしまう
1点目は、すぐにアイデアを考えている点です。元々、自社の強み弱み、社内で保有している技術やリソース、現行製品やサービスの理解はあると思います。しかしそういった既存の知識からアイデア出しを始めると、どうしても既存製品やサービスの改修、機能追加という発想になりがちです。
新規事業は自社を中心に考えるのではなく「ある人(たち)の」「何とかしたい問題」への解決手段として考えるものです。この視点無しに既存の情報から出てくるアイデアは「ある人(たち)」のニーズを満たせないものになってしまいます。 つまり「いきなりアイデアを考えるのではなく、まずはしっかりと人に話を聴く」ことが重要だということです。
ユーザーの声を聴いていない
人に話を聞こうとなったときに潜む2点目の罠が、話を聞く相手が"足りない"ということです。"足りない"というのは人数の多寡ではなく、聞くべき対象が"足りない"ために、「誰の」「どのような課題を」解決すべきかの材料が不足するということです。
話を聞く相手としてよくあるのは、上司や過去に社内で事業を立ち上げた人です。その人たちに聞くべきは、どのように進めていくべきか、経営視点といった話です。 しかし、上司であっても顧客層の具体像や課題は知らないことが意外と少なくありません。自分たちが考えるための参考としてヒアリングを行いましょう。
最も重要なことは本当に困っている人の「声」を直接「聴く」ことです。定量的な数字はもちろん大切ですが、顧客が何を考え、何に困っているかという定性的な要素にこそ事業の種があります。
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4. 新規事業立ち上げのおすすめ5ステップ
上記を踏まえ、新規事業立ち上げで参考にしていただきたい5ステップは下記です。

重要なことは、 ・ユーザーとその課題の解像度を上げる ・アイデア検討やMVP(Minimum Viable Product)開発でもユーザーにヒアリングを行い、その声をまた開発に活かす ・上記を継続的に繰り返す ・これらを繰り返すことができる体制を作る ということです。
企業によって企画の上申プロセスはさまざまです。しかし、上申の過程で自分たちが作ろうとしているものが「誰の」「何を」「どのように」解決するものかを明確にしておくべきです。
5. 新規事業立ち上げの成功事例
ユーザーの声から新規事業立ち上げを支援した事例として、ティップネス様のシニア向けサービス開発が挙げられます。
フィットネスクラブやジム・スポーツクラブを展開しているティップネス様では『シニアも含めた新しい運動コミュニティの新業態、サービスをデザインする』というテーマで、新たなフィットネスジムのあり方を検討されていました。 このテーマのためにシニアの価値観を改めて捉えなおす必要があると考え、お客様の行動観察を起点とした価値観の把握をスタートしました。
まずは漠然と考えているお客様層や既存ニーズをもう一度洗い出し、ディスカッションしました。 その後、お客様の理解を深めるためにお住まいを訪問し、日常の行動や話す内容を見聞きしつつ「なぜそのように考えるのか」という想いについても伺いました。これらの結果に加え、ティップネス様の提供したいモノ・コトと、実際の暮らしぶりや行動を踏まえたお客様層のインサイトを導き出すワークショップを実施しました。
この結果、当初ティップネス様が考えていた『シニアを囲い込み、ストイックに運動できる場を提供したらよいのではないか』という視点から、『シニアは、「運動」を軸に他者とつながりたいとは思っておらず、コミュニケーションの1つとして運動があってもよいという緩いつながりを求めている』ことが分かったのです。
お客様の価値観が明らかになったことで、新たな事業に向けたコンセプトや自分たちが考える価値を明文化できました。それを実現する新たなコミュニティとして「喫茶ランドリー 宮崎台店」をオープンするに至りました。

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6. 顧客実態を起点にした新規事業開発
実態にもとづいたユーザーの深い理解を行うことで「お客様は何に困っているのか」「自社のリソースと掛け合わせ、どのような解決手段があるのか」が明確になり事業化に至ることがあります。
オージス総研は国内の行動観察のパイオニアとして、お客様の理解や実態把握で豊富な経験を有しています。 新規事業立ち上げにお困りの場合、まずはお気軽にご相談ください。
2023年9月27日公開
※この記事に掲載されている内容、および製品仕様、所属情報(会社名・部署名)は公開当時のものです。予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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