「デザインリサーチ」で人の本質的なニーズを捉える~考え方・手法・注意点~

注目を浴びている「デザインリサーチ」
"デザインリサーチ"と聞くと皆さんはどのようなことを思い浮かべますか?
「詳しく知らないけれど、最近よく耳にするし、なんとなく気になる。」
「なんだか良いものを生み出せそう。」
そのように感じている方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
本コラムでは、デザインリサーチとは何か、注目されている背景、具体的な手法やその注意点をご紹介していきます。
デザインリサーチとは?
デザインリサーチを説明する前に、そもそも「デザイン」とは何なのかご説明します。
デザインについては多くの人の間で議論がされており、1つの明確な定義はありませんが、共通して言えるのは「ヒト中心で目的を捉え、目的達成のために設計し、実現する」といった要素です。
20世紀の工業製品に大きな影響を与えた、デザイナーのチャールズ・イームズもデザインについてこのような言葉を残しています。
デザインは工業における何らかの問題解決策です
(引用元より筆者邦訳: https://www.hermanmiller.com/stories/why-magazine/design-q-and-a-charles-and-ray-eames/(外部サイト))
つまり、デザインリサーチとは人間中心の調査手法であり、問題そのものを見つけ出し解決していくものであると考えられます。

デザインリサーチの手法の1つ「行動観察」に関するPDF資料
デザインリサーチの手法の1つに「行動観察」があります。行動観察をもとに顧客起点の価値創出するポイントや事例についてまとめた資料をダウンロードできます。
貴社のデザインリサーチを推進させるヒントにご活用ください。
デザインリサーチの目的と注目されている背景
デザインリサーチは人を理解して本質的なニーズを捉えることを目的としています。
その背景には、社会が成熟し人々の価値観が多様化していること、情報が増え伝播速度も上がり、人々のニーズが絶えず変化し、進化していることが挙げられます。
非デザインリサーチ的なプロセスで進めていると、変化する人の価値観やニーズを捉えることができず、的外れとなってしまう可能性があります。デザインリサーチによって、変わり続ける社会の中でも的確に問題を設定し人の心を掴むプロセスが求められているのです。
デザインリサーチの進め方例 7つのステップ
デザインリサーチの進め方はケースバイケースですが、1つの例として下記のような進め方が挙げられます。
- 問題を定義するための実態や情報を把握する
- 問題を定義する
- インサイトを導くための事実を収集し気づきを得る
- インサイトを導き出す
- 提供価値を考える
- アイデアを検討する
- プロトタイプでアイデアの価値を検証する
顧客やユーザーを中心に考えるためには、製品やサービスを作り込んでからユーザーに使ってもらうのではなく、簡単なプロトタイプでユーザーに試してもらい、ユーザーからのフィードバックを新たな事実としてそれをもとにブラッシュアップする、というプロセスを繰り返すことがポイントです。
このフィードバックとブラッシュアップを繰り返すプロセスは、最初の問題定義が誤っていると収集する事実の粒度やポイントがずれてしまい、それらから導出されるインサイトや提供価値、アイデアまでずれてしまいます。問題を範囲や背景を含め明確に定義することがデザインリサーチにおいて非常に重要になります。
デザインリサーチの「問題定義」における注意点
要となる問題定義でポイントとなるのが、自分たちの想像ではなく実態や周辺情報をもとにすることです。現場でどのようなことが起きているのかやルールや先行事例をはじめとする、問題に関係する情報を丁寧に把握し、そこからの気づきをもとに問題を設定します。
ここで強くお伝えしたいのは、「問題定義を急がない」ということです。多くの実態や情報から気づきを得て問題を定義するのは一見遠回りに見えますが、問題定義の仕方で導かれる答えは大きく変わります。どのような観点から問いを立てるかが非常に重要になるのです。
かのアインシュタインもこのような言葉を残しています。
自分の命がかかった問題を60分で解かなければならないのなら・・・・・
私は、55分は問題を定義することに使い、残りの5分はその問題を解くことに使う。

デザインリサーチの具体的手法 行動観察
実態や事実を集める手法の1つとして、オージス総研は2005年ごろから「行動観察」を取り入れてきました。行動観察とは、さまざまな"場"において人がどのような行動をしているかをつぶさに観察する手法です。その特長は主に3つあります。
人の無意識の行動を捉えることができる。
人の行動を観察することで、言葉では表現できない意図や要望に気づくことができます。
その時その現場でしか得られない情報を得られる。
タイミングや場所、その場にいる人など、さまざまな要因で人の行動は変化します。ある行動をしていた状況についての事実を収集することで、その個人のみに帰属しない、さまざまな観点から仮説生成ができます。
多様な事実を統合することで本質的な仮説を導き出す。
目的に合った多種多様な事実を俯瞰、統合していくことで対症療法的でない本質的なニーズや課題に辿り着くことができます。
このような特長から、行動観察はデザインリサーチにおいて、問題そのものを見つけ出すことと、インサイトを導き出すことに非常に有効な手段と言えます。
デザインリサーチの手法の1つ「行動観察」に関するPDF資料
デザインリサーチの手法の1つに「行動観察」があります。行動観察をもとに顧客起点の価値創出するポイントや事例についてまとめた資料をダウンロードできます。
貴社のデザインリサーチを推進させるヒントにご活用ください。
行動観察を用いたデザインリサーチの注意点
ただなんとなく場を見ているだけでは、自分が元々持っている考えにあてはまる事実ばかりを収集してしまいます。観察をする時には、2つの姿勢が必要です。
- 起きている事実を一旦ありのまま受け入れる、受容する姿勢
- 今までの自分の考え方が変わるようなことであっても、他者から学ぼうと、学習する姿勢
自分の信念や価値観は一度忘れて客観的に観察し、事実を集めることが大切です。
デザインリサーチにおいて大切な心構え
デザインリサーチの最初のステップは問題定義であり、そのためにはその場で起きている事実を丁寧に把握することが重要です。
変化の激しい時代の中、早く答えを出したくなる気持ちはとてもよくわかります。しかし、そんな不確実な時代だからこそ急ぐ気持ちをぐっと抑え、丁寧に人と人を取り巻く場を見つめ、今まで気づいていなかった新たな仮説や洞察を得ることがこれからの未来を創る私たちに求められているのではないでしょうか。問題定義を焦らず丁寧な事実収集を心がけましょう。
2023年12月27日公開
※この記事に掲載されている内容、および製品仕様、所属情報(会社名・部署名)は公開当時のものです。予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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