良いUXを考えるための土台となる、「UXリサーチ」の考え方

Webサイトでも商品・サービスでも、「UXの向上」やより良いUXを設計する「UXデザイン」という言葉が昨今よく聞かれます。UXの向上などを考える際には、まず「現在のユーザーが対象となる商品・サービスにおいてどのような体験・経験をしているのか」を知ることが必要です。本コラムでは、UXやUXリサーチの概要、UXリサーチを行う際のポイントについて記載します。

UX/UXリサーチとは何か

UXとは、「User Experience(ユーザーエクスペリエンス)」を省略した言葉で、ユーザーが商品やサービスを通じて得られる体験・経験またはそれらから得られる印象のことを指します。

このUXを考える上で、ユーザーにとって理想的な体験・経験をしてもらえるよう、商品・サービスを企画・設計・提供することを「UXデザイン」と呼びます。UXデザインのプロセスには、商品やサービスの企画段階で現在のユーザーのUXを知り、理解する「UXリサーチ」が含まれており、本コラムではここに焦点を当てていきます。
(UXデザインには、プロトタイプのUXを評価するプロセスもありますが、企画段階のUXリサーチを取り上げます)

UXリサーチの重要性

そもそも、近年UXが注目されるようになったのはなぜなのでしょうか。マーケティングは時代と共に変化しており、求められる在り方も変遷してきました。大きな流れとしては、
①良い商品・サービスを提供すれば売れる
②ユーザーの「ニーズ」を導出してアプローチすれば売れる
③ユーザーに対する「価値」を提供する
となってきました。

また、ユーザー側もモノやサービス、情報はインターネット・SNSなどを通じて容易に手に入るようになり、多くの情報に触れることで価値観が変わる機会が増えました。それにより、価値観の多様化が促進されています。
商品・サービスから得られるUXも、価値観の異なるユーザーによってさまざまな体験・経験がなされることで、元々企業が提供していたものとは違う価値がユーザーの手で創造されることが増えています。
そのため、UXリサーチを通して現在のユーザーの体験・経験を知ること、理解することは、ユーザーと共により良いUXを企画・設計・提供するための土台として重要だと考えられます。

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UXとUIの違い

UXと共によく見られる言葉に「UI」があります。UIとは「User Interface(ユーザーインターフェース)」を指し、Interfaceは接触面・境界面という意味で、ユーザーと商品・サービスをつなぐもののことです。例をあげると、パソコンなどの機器の画面やマウス・タッチ画面、店舗の掲示物や看板など、ユーザーが商品・サービスを利用する際に接触するものは全てUIです。

利用時の画面での操作やマウスなどの接触面の使い勝手が向上すれば、商品・サービスのUXの向上にもつながるため、UIはUXに含まれていると言えるでしょう。

UIの使い勝手や適切かどうかを調査する手法のひとつにユーザビリティテストがありますが、現在のユーザーの体験・経験などを把握・理解するUXリサーチとは範囲が異なることが分かります。

一方、UXはUIだけでなく、利用前・利用中・利用後・他のサービスとの連携など、その商品・サービスの全ての体験・経験を指しています。そのため、UI単体で見ると良い内容になっていても、UXの視点で見ると良い体験にならない場合もあります。

UXリサーチの設計・実施時のポイント

UXリサーチでは、現在のユーザーのUXを把握・理解するためのリサーチ手法として、インタビュー調査や日記法、行動観察調査などの定性調査をよく用います。上記のようなUXリサーチを設計・実施する際にオージス総研が考える重要なポイントを2点紹介します。
①調査するユーザー体験・文脈の範囲を考慮する
②調査現場から得られるものを大切にする

①調査するユーザー体験・文脈の範囲を考慮する

UXとは、ある商品・サービスにおける現在のユーザーの体験・経験のことですが、ユーザー自身は自分の生活の一部として、さまざまな文化・価値観・文脈の中で商品・サービスを利用しています。そのため、UXリサーチでは、商品・サービスの利用前・利用中・利用後の文脈に留まらず、商品・サービスを利用する時/利用しない時の文脈など、調査対象となる商品・サービスにまつわる内容を検討し、調査する範囲を決定しています。

また、類似の商品・サービスの利用経験がある場合は、その体験・経験についても調査し対象商品・サービスとの違いの把握を行ったり、ユーザーの1日の生活の流れを把握し、その中での商品・サービスの位置づけを確認したりすることもあります。
これらを把握・理解することで、ユーザーの価値観や文脈に合った、良いUXをデザインしやすくなります。

②調査現場から得られるものを大切にする

コロナ禍を経てオンラインでのリサーチが普及し、リサーチをする側もされる側もオンラインに慣れてきた結果、オンラインでのリサーチは手軽にできる手法のひとつとなっています。

オンラインも非常に便利なのですが、UXリサーチをする際は「調査対象者の自宅などの商品・サービスを購入・利用・廃棄など調査対象にまつわる現場」に赴くことが大切です。現場では、インタビューや日記には表れない調査対象者の無意識の行動が見られたり、調査対象者の考え方・価値観・生活の流れを感じられるモノがたくさん散らばっていたりします。また、インタビューや日記など言語情報だけではイメージしにくいものや言葉の解釈が異なるものも、現場に行けば視覚情報として共有でき、UXデザインをする際に関係者間で同じ状況を想像しながら進めることができます。

直接現場に行くのが一番情報を収集できますが、現場に行ける人数にも限りがあるため、オンライン会議ツールなどで接続して現場のツアーを実施するなど、オンラインの活用も可能となっています。

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UXリサーチの実施例

それでは、オージス総研にて実施したリサーチ事例を、簡単ではありますが2つ紹介します。

①Webサービスの調査事例

WebサービスのUX向上のためにリサーチを実施し、調査対象者に対しWebサービスの利用における行動観察・インタビュー調査を行いました。このリサーチでは利用シーンだけでなく、利用前(どうやって到達するか)や関連する他のWebサービスの情報参照シーンなど、Webサービスにまつわるシーンを広く調査範囲としました。その結果、関連Webサービスとの情報の表示形式の不一致というUI上の課題が見つかったり、利用(到達)前にユーザーが不安に感じることが分かったりと、ユーザーの文脈に沿った課題発見が可能となりました。

②小売店の調査事例

このリサーチでは小売店での売上向上のため、施設利用者に対して行動観察調査を実施し、その結果から改善した掲示物を施設に設置して効果を検証しました。利用者が施設にどのように入ってくるか、施設内でどのように移動したり商品を手に取ったりするか、混雑や商品決定においてストレスがかかる場面があるかを確認するなど、利用者の体験に沿う形で課題を洗い出し、掲示物を改善しました。改善された掲示物は再度現場に設置し、ユーザーの体験にそぐわない箇所があればその場で調整を行いUXおよび売上向上につながりました。

ユーザーにフィットした施策のためのUXリサーチ

ユーザーは商品・サービスを単体ではなく、自身の生活の中の一部としてそれを利用しています。UXリサーチを行い、「ユーザーの文脈・流れ・体験を理解」することで、それを踏まえたよりユーザーにフィットした施策を実施することが可能となります。

オージス総研は国内の行動観察のパイオニアとして、お客様の理解や実態把握で豊富な経験を有しています。UXリサーチの進め方にお困りの際は、まずはお気軽にご相談ください。

2023年11月20日公開
※この記事に掲載されている内容、および製品仕様、所属情報(会社名・部署名)は公開当時のものです。予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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