新規事業開発の成功プロセス「アイデア出しの3つの手順」
新規事業開発に取り組むにあたり知っておきたいこと
新規事業開発に求められていることとは
新規事業開発に求められているのは、新たな価値の提供です。
企業活動の中では、既存事業が順調であったとしても、事業競争の激化、既存事業の成熟化を鑑み未来の収益源を創る必要があります。新規事業ではこれまでのやり方やビジネスモデルを変革し、これまでにない価値を提供、すなわちイノベーションを伴わなければ顧客に支持をしてもらえません。
しかし、新規事業開発の担当となったものの、新たな価値を生み出すために何から始め、どのように進めていけばよいか分からない、社内でアイデアを公募したものの、思ったより応募がなかったり、事業検討できそうなものがなかったり、といったことはないでしょうか。
新規事業開発の第一歩
新規事業開発というと、0から1を生み出すもの、とイメージする方もいらっしゃると思います。しかし、新しい事業を作るのは既存技術やサービスとのかけ合わせでも可能です。結果的に顧客に支持されるような新たな価値が提供できればよいのです。
しかし、0から1を生み出す場合でも既存事業のかけ合わせの場合でも、新たな価値に繋がる質の良いアイデアを生み出す必要があります。その新たなアイデアを生み出すには、源泉となる質の良いファクトを得ることがスタートになります。
STEP.1 アイデア検討に入る前に、的確なファクトを収集・把握する
ファクト収集するにあたって
新規事業を開発する際には、いきなりアイデアを考え出そうとする前に、ファクトの収集が必要です。思いつきで顧客ニーズのない商品やサービスを作ってしまうと、投下したリソースが無駄になってしまう上、サンクコスト効果で引くに引けない状況になることもあります。
ファクトを収集しなかったり見誤ったりすると、情報の不足や不適切な情報収集が発生し、良質なアイデアを生み出せなくなってしまいます。特に昨今、コロナウイルスの影響によって生活様式や働き方、価値観が大きく変わっているため、旧来のイメージをもとにアイデア出しをすると実態と大きく乖離してしまう可能性があります。
確かな実態を捉えつつ、短期的に効率よく情報収集するための調査設計、ツールや手法の選定が重要です。
ファクト収集時の注意点
ファクト収集にはアンケートやインタビュー、行動観察など様々な手法があり、効果的に組み合わせる必要があります。このときに注意すべきは、人間の心理学的特性によりバイアスのかかったファクトを収集してしまう可能性があるということです。
例えば、下記のようなことは注意が必要です。
- 選択的注意:注意をはらった事柄はしっかり認識されるが、注目していない事柄は無視される
- 認知的不協和:自分の考えと矛盾した情報を得たとき、不快になりどちらかを直ちに捨てて不快から脱しようとする
- 確証バイアス:一度、自分の解釈・仮説が確定してしまうと、なかなかその枠組みから抜け出すことができない
- 基本的帰属錯誤:誰かの行動について考えるとき、その行動の原因を性格などの「その人」に求めがちで、状況などの「その人の置かれている環境」を過小評価する
「こういうことが起きてしまう」と理解した上で、ファクト収集を進めましょう。
STEP.2 収集したファクトからインサイトを導出する
インサイトとは、ニーズ・願い・実現したいこと・ありたい姿など、行動や発言、考えの元となっているその人の世界の捉え方です。
収集したファクトについて、「これは一体何を意味しているのか」「この人は何を実現したくてこうしている、このような考えを持っているのか」「このような行動・考えの元にはどんな価値観があるのか」などの解釈や仮説を言語化していきます。
このとき、まずは数を出していき(発散思考)、同じような心の動きがありそうなものを統合していく(収束思考)ことがポイントです。
STEP.3 インサイトからアイデアを考える
インサイトを満たすためのアイデアを出していきます。そのとき、すぐにアイデアを出すのではなく、例えば下記のようなことを考えニーズや方向性を共有した上、インサイトを満たすアイデアを出していくことをおすすめします。
- エンドユーザーに届けたい体験価値や生活変化などの提供価値
(どういうシーン、どういう人、どういう気持ち) - 企業の方向性や意志、外部環境
方向付けができたら、ファクトからインサイトを導出したときと同様に、まずどんなに小さなアイデアでも出して発散し、その上で収束していくとよいでしょう。
アイデア創出から事業化までのプロセス
アイデアを実現させるまでのプロセス
アイデアを出した後はコンセプト開発~商品開発~ビジネスプランニングというプロセスで進めていきます。
顧客インサイトやアイデアをもとに、提供価値を定義します。その上で、プロトタイピングを実施し、顧客からのフィードバックを得ながらブラッシュアップ、参入市場のターゲティングやポジショニングを検討していきます。これらをクイックに実行していくことで、より提供価値の高い事業を目指すことができます。
アイデアによって、プロセスの詳細が変化する、プロセスが非線形になることもしばしばあります。ここで重要なことは、顧客視点の維持です。商品やビジネスプランの検討事項が具体的になってくると、起点となる顧客視点を忘れてしまうことがあります。顧客視点を検討状況に応じフレキシブルに取り入れながら新規事業を創出を目指しましょう。
入念な計画が必要な一方で要求されるスピード感
事業化のプロセスを適切に進めていくには入念な準備や計画が必要な一方、他社の台頭や市場変化を考えるとスピードも重要なポイントです。
スピード感のある新規事業開発を進めるためにも、誰がどのように意思決定をするか明確にしておき、一方で、属人的にならないようにしておくことが求められます。
まとめ
新規事業開発を成功に導くために
新規事業開発を始めるときには、いきなりアイデア創出を始めるのではなく、適切なファクトを収集、分析しインサイトを導出していくことが重要です。行動観察やインタビューなどを用いて顧客のインサイトを理解することで、ニーズにマッチしたアイデアを探すことができます。
IT技術の発達やDXの推進によって、以前より簡単に定量データを集められるようになりました。しかし、定量データの向こうには必ず人がいます。人に関して丁寧に向き合うことで、新規事業開発の立ち上がりが確かなものになるのではないでしょうか。
オージス総研では、生活者起点のファクトの収集、インサイトの導出、新規事業の開発や組織作りを数多く支援してきました。新規事業についてお困りの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。
2021年9月15日
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