「生活者インサイトリサーチにおける新たな挑戦」セミナー
開催レポート(1)(花王株式会社様)

2022年11月30日(水)に、Zoomにて『生活者インサイトリサーチにおける新たな挑戦』と題して、セミナーを開催しました。
本セミナーでは、長年弊社とお付き合いのある、花王株式会社様、ハウス食品株式会社様にご登壇いただきました。本コラムでは、ご講演の一部をご紹介します。

1.花王株式会社 秋田様 『デジタルツールを活用した新たな生活者研究手法の探索』
2.ハウス食品株式会社 小田川様 『食品における新しい開発アプローチへの取組み』

※本コラムは登壇者様の発表内容を可能な限りそのまま載せておりますが、読みやすさ向上のため一部改変しております。


1.花王株式会社 秋田様 
『デジタルツールを活用した新たな生活者研究手法の探索』

 花王は洗剤、紙製品、健康サポート商品、化粧品などご家庭で使うものを作っている会社です。一部トナーなどのケミカル商品も作っています。私の部門は、歴史は古く、昭和9年からと聞いています。当時は、生活者の方に、シャンプーの使い方、洗濯のやり方といった講習会を実施し、生活者と接点を持つ部門でした。また、製品に関わる実験を行う部門でもありました。90年半ばに、消費者部門と研究部門が分かれ、現在の体制になっています。

 私たちの活動は、実際に生活者のお宅にお伺いして、生活の一部を見せていただいたり、お話を通じて想いを聞いたりすることでした。私たちの活動の原点はここにあります。
 生活者の声は、事業に活用していくものもありますが、有識者に研究結果を聞いていただき、得られた知見の発信にも活用しています。「くらしの研究」サイトにて、生活者研究の知見を発信していますので、ぜひご覧ください(https://www.kao.co.jp/lifei/(外部サイト))。
 現代は、社会の中で自分がどう生きていくかに、関心が高まっており、このサイトの中でも、社会の中でできることを考えて発信しています。

 長く生活者研究をしていますが、生活者の視点に立つということを考えています。「消費者の視点」として見がちですが、「生活者」をいろんな側面から掘り下げたいと思っています。そのため、私たちの研究では、生活現場での「観察」と、生活者との「対話」が大切だと考えています。生活者は、どうありたいか?どう生きたいか?が、時代に合わせて、少しずつ変わっていくと思うので、それを捉えていきたいと思っています。生活者の想いはなかなか説明できなかったり、気付けていなかったりするので、そのために、いろんな調査手法を取り入れてやってきました。今日は、そんな取り組みを紹介できればと思います。

 (中略)

 10年以上前に産総研と調査をやったことがあります。生活者の現場の家庭に伺うと、掃除の仕方はさまざまであることがわかります。どのように掃除をして、どんな気持ちなのかを捉えるために、マンションの一室を、普段の生活に近い形で生活感あふれる部屋にし、位置を計測するセンサーや、加速度センサーを対象者につけて動きがわかるようにし、気持ちをつぶやきながら掃除をしてもらい、気持ちを数量化しました。それを、ベイジアンネットワークを用いて解析しました。
 すると、食事テーブルの掃除の時に、子供がいるかいないかで不潔と感じるかどうかに差があると出てきました。子供がいない人は、食事テーブルに嫌悪、不潔、疲労が結びつきますが、子供がいる人は、掃除が済んだ、達成感などポジティブなワードが並びました。
 このように関係性を可視化することで、対処方法が変わってきます。

 昨年は、オージス総研の支援で実施したプロジェクトがあります。現在、テレワークが多くなっており、テレワークの満足度を聞くと、満足が6~7割。特に、若い人の方が満足しています。生活者の声を聴くと、テレワークをする人は8時~18時の間に家事もしていることがわかり、仕事の合間の気分転換と軽い運動になってよいという回答が出てきました。
 仕事中の家事で効率が上がるかを、脳波、ビデオ撮影で検証しました。脳波により、わくわく、興味、ストレス、集中、沈静のデータを収集しました。

 (中略)

 脳波を調べることで、気持ちのデータが大量に取得できるのがわかり、気付いていないような気持ちの変化を脳波で知覚し、ビデオで意味を推察できるのは有効そうだと思いました。

 現場の大切さは変わらないと思っていますが、今後はデジタルを活用することで、新たな仮説のヒントづくりを持つことができると思います。アナログでしか収集できない感覚なデータもありますが、デジタルも進化し、精度が向上すれば役に立つかもしれません。いろんなデータが集まり、それを解析すれば見えてくることもあります。こういった新たなアプローチを異なる分野で活用しあい、教えていただくことで、進化していくと思います。

オージス総研 関連サービス
行動観察×AI
ユーザー理解に基づくコミュニケーション戦略
その他、ベイジアンネットワークを用いた分析や、上記のような脳波による分析も取り入れて調査しております。

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