WEBマガジン

「イノベーションの育て方 ~ハナさんのストーリー~ (22)」

2020.07.27 株式会社オージス総研  山海 一剛

2019年8月27日

佐野さんの予告通り、この日はHow Might Weクエッションを考えるワークショップ。早めに来た佐野さんに、今日は大森くんにファシリテートさせたいと相談してみた。
「いいんじゃないですか、何かあれば私と岩崎さんで救援しましょう」
ということで、大森くんが初ファシリテートとなった。当の大森くんは、
「え、やっていいんですか」
と、少し嬉しそうだった。

「せっかくなので、How Might Weクエッションの説明も大森くんにやってもらいましょう。スライド数はそれほど多くないので」
佐野さんが用意していたスライドをざっと目を通しただけの大森くんなのに、すらすらと説明してくれたので驚いた。

「では、着眼点をみながら、How Might Weクエッションを出来るだけたくさん出しましょう」
とワークショップに入ったところで、みんな苦しみ始めた。説明は理解できたものの、自分たちの着眼点から考えだすには、まだぴんと来ていないようだ。

「例えばですね、ネットでこういう例を見つけたんですが(*1)
と、大森くん。
「小さい子供連れの家族が、空港の待合室で搭乗時間を待っているんです。これから飛行機に乗るわけなので、どうしても子供がはしゃいで騒がしくしてしまう。それを何とかしたいとします。着眼点にすれば、こんな感じです。

[小さい子供連れの家族]
[搭乗までの待合い時間、子供たちに他の旅行者の迷惑にならないように]する必要があった。
なぜなら
[自分たちは子供がはしゃぐのは苦にならないが、他の旅行者に迷惑をかけるのは避けたいとおもっている]から」

「おっと、これは難問だな。旅行でテンション上がってる子供を静かにさせるのは難しい」
と販売部の福西さん
「でも、子供を静かにさせるだけが方法じゃないですよね」
「というと?」
大森くんが答える。
「要するに、他の旅行者の迷惑にならなければいいと考えれば、いろんなやり方があるわけです。それがHow Might Weクエッションということのようです。例えば、『我々はどうすれば、はしゃぐ子供たちの姿を、他の旅行者が楽しむようにできるだろう』とか。」
「なるほど、逆転の発想か」
と印刷部の水沼さん。

ときどき、佐野さんや私に視線を送って、「まちがったこと言ってないですか」とアイコンタクトする大森くん。それにこたえて、大きくうなずく私たち。その調子だ大森!

「あるいは『我々はどうすれば、子供連れの家族を、他の旅行者から隔離できるだろう』とか、いっそ『我々はどうすれば、待ち時間の発生しない空港にできるだろう』とか」
「あはは、そもそも問題が生じる状況自体を無くしてしまうのか。でも現実にそんな空港できるのか」
と営業部の萩原さん。
「実現性はまだ考えなくていいんです。なるべくいろんなHow Might Weクエッションを考えだすことが重要です。」
先輩たちに物怖じせず、しっかりした口調で説明を続ける大森くん。

「ここでアタマを柔軟にして沢山出しておかないと、この次のアイデアステップも狭い範囲で考えることになりますよ」
加えて佐野さんが質より量を追求することの意味をフォローする。

「いっそ、ウケを狙いましょう。大喜利でもするような感じで」
大森くんの補足が、京子の受け売りだったので、思わず笑ってしまった。

そうすると徐々に、案が出始めた。
「じゃぁまず素直に、『わたしたちはどうすれば、家族が互いに気を使わずに状況を確認しあえるようにできるのか』」
「では今のと少し被るけど、『わたしたちはどうすれば、家族を鈍感にできるのだろうか』」
と萩原さん。
「鈍感?」
「そう、相手の生活を邪魔するんじゃないかなんて、気にしない性格になってもらえばいいんだ」

「こういうのは?『わたしたちはどうすれば、相手家族に知られずに相手家族の状況を確認しあえるようにできるのか』」と、編集部の大崎さん。
「盗聴とか盗撮の雰囲気があるけどな」
と、水沼さんがつっこむ。

「こういうのはどうですか」
と大森くん
「『わたしたちはどうすれば、互いの家族の都合がいい時間帯を知ることが出来るのだろうか』、つまり、いつなら都合がいいかって分かっていれば、気兼ねなく連絡を取り合えますよね」

「なるほど、そういう発想があったか」
と福石さんが感心する

初めてのセッション

こんな感じで苦しみながらも、いくつかのHow Might Weクエッションを出すことができた。ワークショップが終わり、みんなが解散してから佐野さんが私に話しかけた。
「大森さんのファシリテート、全然救援する必要なかったですね。最初にお会いした時と比べると、たくましくなった感じです」

本当に私もそう感じる。
ひょっとしたら、頼りないと勝手に決めつけて、彼が成長できるチャンスを与えていなかった私の問題ではないだろうか。
ワークショップが無事終わったのに、少しへこんでしまった。

「参考文献」
(*1) How Might We クエッション の例については以下のPDFを参考にした
How Migth We -Stanford University
<つづく>

*本コンテンツはフィクションです。
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