第15回 70デザイン項目を活用してシステム、製品の使用実態や問題点を探る(3)
2011.04.22 山岡 俊樹 先生
今回は感性デザインの観点から観察をおこなう。
感性デザイン項目は製品の感性を高めるデザイン項目であり、以下にその内容を示す。
(1)デザインイメージ:モダン、クラシックなどのデザインイメージに関する要素
(2)色彩:暖かい色、シャープな色などの色の要素
(3)フィット性:イスなどの機器と人間との一体感のある感覚
(4)形態:シンプルな形、流れのある形などの形態の要素
(5)機能性・利便性:機能が良い、操作性がよいなどの機能や利便性に関する要素
(6)雰囲気:インテリアが良い、落ち着いたなど雰囲気に関する要素
(7)新しい組み合わせ:素材や異質なメディアどうしの組み合わせなどの今までに無い組み合わせに
(8)質感:素材感、仕上げなどの質感の持つ要素
(9)意外性:従来と異なる意外性は、感性を感じさせる基本的な項目である
特に、これらの項目の内、(5)機能性・利便性は感性を高める項目でもあるので注意を要する。
この9感性デザイン項目は、デザインの調査に役立つので、以下にその活用方法を述べる。
(1)製品や空間をこのデザイン項目の観点から調べることが可能である。デザイン経験のない者でも、大まかなデザイン傾向を把握することができる。また、これはチェックリストとして活用できる。
(2)通行人の持ち物(例:鞄)や店舗での商品のパッケージデザインなどの観察に用いることができる。調査物が鞄ならば、デザイン:モダン、カジュアル、クラシック、色彩:黒系、赤系、白系、茶系、形態:単純系、装飾系、質感:プラスチック系、皮系、布系などと自分の調べるカテゴリーを決める。現場で通行人の鞄を調べ、該当するカテゴリーに1を配したマトリックスデータから形式概念解析(第11回目 に紹介)を行う。店舗での商品のパッケージデザインの場合も顧客が選んだパッケージを同様に解析することができる。
(3)この項目を使って、調べたい商品のデザインコンセプトや企画案を推測し、改良案(修正コンセプト)を出すことができる。写真は九州・博多にあるキャナルシティの吹き抜けの共有空間にある噴水である。建物が赤系と茶系の落ち着いた空間であるが、水路から意外性を狙って噴水が工夫をこらして演出されている。なぜそのような工夫をするのか企画者の意図(コンセプト)を推測する。キャナルシティの場合、噴水は空間における単調感を避けるためと顧客への変化・刺激を与えることであり、1階で行われるイベントとの連動も考えられている。そのようなコンセプトと推測するならば、それを更に促進するための修正コンセプト(改良案)として、壁面に映像を流すなどというアイディアも生まれる。
※先生のご所属は執筆当時のものです。
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