第13回 モノやシステムの本質を把握する(3)

2017.06.26 山岡 俊樹 先生

 何か問題点があると、通常行うのが対処療法的な方法である。ある問題点に対して、その解決案を考えてゆくという方法である。先日、ある学会の大会で発表を聞いていたら、対処療法的な方法と思われる内容であった。ある対策の組織を立ち上げるのに必要な要件を決める際、過去に係わった関係者に対するヒアリングデータ、過去のデータベースを基に組織を構築したという内容である。大学でデザインの指導をしていると学生は、オブジェクト(モノ)を中心に考えてゆくというのが良く分かる。人間は本来あるべき姿を考えてから、具体的レベルに落とし込むことよりは、実在するオブジェクトを中心に考えてゆくほうが楽なので、こちらのほうが自然な思考である。現在のデザイン方法もモノ中心に展開してゆく方法を採っており、モノを中心に観察、ディスカッションを行っていく方法である。機能が単純な日常雑貨などには適した方法であるが、複雑なシステムやサービスデザインのような世界では、モノではなくモノを規定している目的を基準に思考していったほうが良い。目的というシステム全体を規定しているベクトルから演繹的に思考した方が合理的である。先の組織の例では、まず関係する専門家で組織の目的を決めて、それを「目的→手段」の関係から分解してゆけば(図1)、行うべき組織のミッションが抽出される。この案ではまだ架空の理想案(基本的骨組み)であるので、これに過去に係わった関係者に対するヒアリングデータ、過去のデータベースなどを追加してゆく。この作業により全体の骨組みがロバスト(頑強)になる(図2)。デザイン作業でも、デザイナーの個人的体験や現状の問題点から発想するだけでなく、その製品の目的は何かと常に問いかける必要がある。目的-手段という構造的な見方は、モノ作りだけでなく、すべての我々の行動、人生を考える際、役立つフレームでもある。人生の目的を明確にしている学生は、その手段である能力向上のため、よく学修・研究を積極的に行っている。

※先生のご所属は執筆当時のものです。

関連記事一覧