第50回 物語性について考える(5)

2014.09.25 山岡 俊樹 先生

 前回前々回では、製品を構成するのが、①有用性(useful),②利便性(usable),③魅力性(desirable)の3側面で、この3側面から物語を分析することができると報告した。


 今回はこの論を更に、構造化、精緻化してみた。京都女子大の学生が社会人約60名にアンケートを行い、下記の項目間の関係を線で結んでもらった。

(1)製品やシステムの構成要素
 ①有用性,②利便性,③魅力性

(2)製品やシステムが包含する物語
 ①歴史の物語,②最新の物語,③架空の物語,④現実の物語

(3)物語により得られる感情
 ①喜ぶ,②親しみを持つ,③驚く,④満足する,⑤愛らしい,⑥憧れる,⑦期待する,⑧心地よさ,⑨面白い,⑩感動する

その結果、代表的な組み合わせを以下に示す。

①有用性→最新の物語→驚く
          →期待する
    →現実の物語→親しみを持つ
          →満足する
          →心地よさ


②利便性→[最新の物語]→驚く
           →期待する
    →現実の物語 →親しみを持つ
           →満足する
           →心地よさ


③魅力性→[最新の物語]→驚く
           →期待する
    →歴史の物語 →親しみを持つ
           →愛らしい
           →憧れる
    →架空の物語 →喜ぶ
           →憧れる
           →面白い
           →感動する


 [ ]で囲った最新の物語は、若干他の項目よりも結んだ線の数が多くはなかったが、無視できる数でもないので採用した。これらの関係はコレスポンデンス分析で解析したいと考えている。上記の結果を見ると最新の物語は有用性とのつながりが強いが、有用性と利便性は同じ構造となっているのが分かる。魅力性は有用性と利便性と異なり、全く別の歴史、架空の物語と繋がっている。また、最新の物語が有用性、利便性及び魅力性に係る重要な要素とわかった。

 前々回示した例を使って、このフレームに当てはめて検討してみよう。

①有用性:ブランド化したある病気に特化した専門病院
 <適応するフレーム>
  ・最新の物語→驚く,期待する
  ・現実の物語→親しみを持つ,満足する,心地よさ
 【ケース1】
  最新の医療機器を導入(最新の物語)すると、患者や入院希望者は期待する。
 【ケース2】
  ブランド化した専門病院の現状を紹介(現実の物語)すると、患者や入院希望者は満足する。

②利便性:サービスが行き届いた高い評価を得ているビジネスホテル
 <適応するフレーム>
  ・最新の物語→驚く,期待する
  ・現実の物語→親しみを持つ,満足する,心地よさ
 【ケース1】
  最新の設備を導入(最新の物語)すると、宿泊者や宿泊予定者は期待する。
 【ケース2】
  高い評価を得ているビジネスホテルを接客などの様々な視点から紹介(現実の物語)すると、宿泊者や宿泊予定者は親しみを持つ、あるいは満足する。

③魅力性:ディズニーランド,ルイ・ヴィトン
 <適応するフレーム>
  ・[最新の物語]→驚く,期待する
  ・歴史の物語→親しみを持つ,愛らしい,憧れる
  ・架空の物語→喜ぶ,憧れる,面白い,感動する
 【ケース1(ディズニーランド)】
  架空のシンデレラ城を建設(架空の物語)すると、利用客は夢を感じて憧れる。
 【ケース2(ルイ・ヴィトン)】
  著名なデザイナーのデザイン(最新の物語)を提供すると、ユーザは期待する。

 前回紹介した構造と時間の概念をこれらの4つの物語に当てはめると、更に深耕することができる。歴史の物語は時間で、架空の物語は構造が大きく影響しており、これらの項目は製品やシステムの特性に依存しない。最新と現実の物語は、製品やシステムの特性に依存するので、構成要素を特定して構造と時間を検討しなければならない。例えば、高い評価を得ているビジネスホテルの場合、現実の物語を構造的にとらえると、評価の良い理由を構造化し、それの下位の項目をPRしてゆけばよい。例えば、それが設備によるものか、従業員の接客の良さなのか、あるいはそれらを統合した良さなのかなどを明確にすることができる。

 次に、このフレームを逆に使うこともできる。感情から物語を推定して、製品やシステムのどの構成要素に位置づけるのか検討することができる。下に例を示す。

【ケース1:憧れる→歴史の物語→魅力性】
 ある商品に対する憧れを顧客に抱いてもらうために、その商品の開発の歴史や過去の販売した商品の変遷などの情報を様々な情報媒体を通じて紹介することにより、その商品の魅力性を高めることができる。

【ケース2:期待する→最新の物語→有用性】
 顧客にある商品の期待度を高めるために、その商品に係る最新技術およびそれにまつわる開発話題(最新の物語)を提供することにより、その商品の有用性を高めることができる。

 以上、物語に関するフレームを紹介したが、このフレームの中の4つの物語を活用すると観察にも適応できる。観察者は商品やシステムを見て、この商品やシステムは4つの物語から、どういう感情を引き起こすのか、あるいはそれがどういう商品上の意味(有用性,利便性,魅力性)を持つのか検討する。物語を感じなければ、どうやって感じさせるのかこのフレームを使って検討すると良い。

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