第28回 消費者のインサイトに仮想コンセプトを使って観察する(1)

2012.10.31 山岡 俊樹 先生

 インサイトとは消費者の心の奥にあるコンセプト=欲求と定義する。デザイナーがコンセプトにより製品をデザインするように、消費者は自分のコンセプト=欲求により行動を起こす。

 この欲求は意識的の場合もあり、無意識的の場合もある。いずれにせよこの欲求はアンケートで得られる場合もあるが、本人があまり自覚していない場合は、アンケートでは難しく、その消費者の行動やインタビューから類推するほか無い。

 消費者の行動から類推する場合、以下の方法がある。

(1)日常・非日常(例えば、旅行)での生活状況を観察あるいは述べてもらう。

 調査したい対象システムにおける、日常、非日常の生活で関係する主要タスクを選択して、その時間軸上で展開する各タスクを観察するか述べてもらう。実験協力者はできるだけ生活などに関して感度の高い人を選ぶことがポイントである。

 例えば、日常生活において、自宅で本格的なCDコンポーネントシステムでクラシック音楽を聞く場合、聞くための準備から聞き終わるまでの各タスクについて観察する、あるいはタスクの順番に従ってインタビューを行い、通常と異なる特異点を記述する。いずれにせよ、特に気になった事項について、質問でその背景を探る。

(2) ターゲットユーザが直接、対象物を撮影する、あるいはターゲットユーザの行為に対し、友人や家族がカメラやビデオカメラで撮影する。

 ターゲットユーザに操作時のシステムや製品の操作手順に従って撮影してもらうように頼み、撮影時になぜその様なところが気になるのかビデオ撮影しながら述べてもらう。第三者の観察者がターゲットユーザの操作・作業を撮影しても良いが、気心の知れた友人や家族が撮影すると被撮影者はストレスが少なく、お互いにコミュニケーションを取りながら撮影できるので都合がよい。友人や家族は撮影中に通常と異なる特異点を見つけた場合、なぜそのようなことをするのかターゲットユーザに聞く。この方法は(1)と異なり、具体的にビデオで撮影するので、わかりやすいという利点がある。

得られたデータの処理方法

 (1)(2)から各タスクにおける特異点を抽出することができ、これらのデータから仮想コンセプト、つまりインサイトを求める。インサイトを求めるには、時代背景、使用環境や運用面等も考慮し、特異点に対し「手段-目的」の観点から、上位概念を求め構造化してゆき、究極の目的を得る。これがインサイトであり、そのユーザの製品やシステムに対する価値観である。価値観が分かれば、それを「目的-手段」の関係から分解(Break down)して、新しいユーザ要求事項を抽出することもできる。特異点ではなく、一般的な事項抽出した場合、それは一般的な誰でも持っている価値であり、わざわざ調査をする必要もない。

 下図において、抽出された特異点A,FとDから究極の目的であるWとRが求まる。これらの構造が仮想コンセプトである。さらにWとRを分解し、WからX、RからYを抽出することができる。このXとYが新しい要求事項となる。例えば、外出時にきちっとした身なりをする人の場合を想定すると、「手段-目的」の観点からその究極の目的を探ると、→他人を意識して、自分の良いところを見せたい→プライドがある等、思いつく。更に、「プライドがある」を分解すると→ サービス対応時、尊敬の念を持って対応するなどの新しい要求事項を考えることができる。

 

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