第18回 モノやシステムの本質を把握する(8)
2017.11.28 山岡 俊樹 先生
前回では再定義の方法を示したが、その考え方はその本質をとらえ、別の観点からその本質を実現することを考えることでもある。
椅子のデザインのアイディアを考える際、椅子の本質は何かと考える。するとそれは体を保持できればいいので、その観点から考えると天井から吊るしたブランコのようなデザインでも良し、また、脚立のようなデザインでも良いという判断ができる。
前回で示した再定義の方法は「一般的な定義あるいは見方」を手段として、その目的は何であるかと考えることである。その作業を1回か何回繰り返して、究極の上位概念を抽出する、と定義した。究極の上位概念を抽出するということは、その本質を探ることでもある。
再定義は前回紹介したようなマクロレベルだけではなく、タスクの可視化を考えるミクロレベルでも対応が可能である。仕事(JOB)をある基準で分解したのがタスクである。このタスクを繋げてゆくと機器の操作となる。例えば、エアコンのリモコンの操作手順を考えると、電源ボタンを押し、冷房、暖房か送風の切り替えを行い、希望する温度設定の順番となる(図1)。
それぞれのタスクを通常の仕方で可視化すると新規性のないデザインとなってしまう。そこでタスクで再定義をして、新しいタスクの可視化像を探ってみる。
例えば、「電源ボタンを押す」は、通常のリモコンボタンを押すことにより実現する。
一方、再定義すると、エアコン本体に電源を入れることなので、リモコン無しでユーザは腕などで様々なしぐさをすることにより、本体側に電源入力が可能となることも考えられる。あるいは、エアコン本体に電源入力の意思表示を伝えればいいので、リモコンを使わずに、ユーザの動作だけでなく、音声によってでも良い。
この再定義の考え方は、新しい別の見方をするわけなので、組織や業務の改善にも使え、汎用性のある方法といえる。しかし、この再定義は何も新しい考え方ではなく、従来、本質を考えてアイディアを出してゆくという考え方はあった。筆者も再定義という言葉がなかった時でも、本質は何かという観点からアイディアを考案し、検討していた。これは、確かVE(Value Engineering :価値工学)の考え方が生まれた時のアイディアでもあったので、最近提唱された訳ではないと思う。
再定義はシステムの本質を検討することであるといえる。更に、深耕すると、本質とその構成要件を検討することと理解することもできる(図2)。
※先生のご所属は執筆当時のものです。
関連記事一覧
- 第96回 ホリステックな考え方(6)
- 第95回 ホリステックな考え方(5)
- 第94回 ホリステックな考え方(4)
- 第93回 ホリステックな考え方(3)
- 第92回 ホリステックな考え方(2)
- 第91回 ホリステックな考え方
- 第90回 思考の硬直・停止(その11)思い込み(固定概念)
- 第89回 思考の硬直・停止(その10)思い込み(固定概念)
- 第88回 思考の硬直・停止(その9)思い込み(固定概念)
- 第87回 思考の硬直・停止(その8)思い込み(固定概念)
- 第86回 思考の硬直・停止(その7)思い込み(固定概念)
- 第85回 思考の硬直・停止(その6)思い込み(固定概念)
- 第84回 思考の硬直・停止(その5)
- 第83回 思考の硬直・停止(その4)
- 第82回 思考の硬直・停止(その3)
- 第81回 思考の硬直・停止(その2)
- 第80回 思考の硬直・停止
- 第79回 ボリューム感
- 第78回 構成の検討
- 第77回 アクセントの効用
- 第76回 活動理論の活用
- 第75回 観察におけるエティックとイーミックの考え方
- 第74回 チェックリストの活用法(5)
- 第73回 チェックリストの活用法(4)
- 第72回 チェックリストの活用法(3)
- 第71回 チェックリストの活用法(2)
- 第70回 チェックリストの活用法(1)
- 第69回 温かいデザイン(45) サービスデザイン
- 第68回 温かいデザイン(44) サービスデザイン
- 第67回 温かいデザイン(43) サービスデザイン
- 第66回 温かいデザイン(42) サービスデザイン
- 第65回 温かいデザイン(41) サービスデザイン
- 第64回 温かいデザイン(40) サービスデザイン
- 第63回 温かいデザイン(39) サービスデザイン
- 第62回 温かいデザイン(38) サービスデザイン
- 第61回 温かいデザイン(37) サービスデザイン
- 第60回 温かいデザイン(36) サービスデザイン
- 第59回 温かいデザイン(35) サービスデザイン
- 第58回 温かいデザイン(34)サービスデザイン
- 第57回 温かいデザイン(33)サービスデザイン
- 第56回 温かいデザイン(32)サービスデザイン
- 第55回 温かいデザイン(31)
- 第54回 温かいデザイン(30)
- 第53回 温かいデザイン(29)
- 第52回 温かいデザイン(28)
- 第51回 温かいデザイン(27)
- 第50回 温かいデザイン(26)
- 第49回 温かいデザイン(25)
- 第48回 温かいデザイン(24)
- 第47回 温かいデザイン(23)
- 第46回 温かいデザイン(22)
- 第45回 温かいデザイン(21)
- 第44回 温かいデザイン(20)
- 第43回 温かいデザイン(19)
- 第42回 温かいデザイン(18)
- 第41回 温かいデザイン(17)
- 第40回 温かいデザイン(16)
- 第39回 温かいデザイン(15)
- 第38回 温かいデザイン(14)
- 第37回 温かいデザイン(13)
- 第36回 温かいデザイン(12)
- 第35回 温かいデザイン(11)
- 第34回 温かいデザイン(10)
- 第33回 温かいデザイン(9)
- 第32回 温かいデザイン(8)
- 第31回 温かいデザイン(7)
- 第30回 温かいデザイン(6)
- 第29回 温かいデザイン(5)
- 第28回 温かいデザイン(4)
- 第27回 温かいデザイン(3)
- 第26回 温かいデザイン(2)
- 第25回 温かいデザイン(1)
- 第24回 人間を把握する(6)
- 第23回 人間を把握する(5)
- 第22回 人間を把握する(4)
- 第21回 人間を把握する(3)
- 第20回 人間を把握する(2)
- 第19回 人間を把握する(1)
- 第17回 モノやシステムの本質を把握する(7)
- 第16回 モノやシステムの本質を把握する(6)
- 第15回 モノやシステムの本質を把握する(5)
- 第14回 モノやシステムの本質を把握する(4)
- 第13回 モノやシステムの本質を把握する(3)
- 第12回 モノやシステムの本質を把握する(2)
- 第11回 モノやシステムの本質を把握する(1)
- 第10回 3つの思考方法
- 第9回 潮流を探る
- 第8回 システム・サービスのフレームワークの把握
- 第7回 構造の把握(2)
- 第6回 構造の把握(1)
- 第5回 システム的見方による発想
- 第4回 時間軸の視点
- 第3回 メンタルモデル(2)
- 第2回 メンタルモデル(1)
- 第1回 身体モデル
- 第70回 UXを考える(6)
- 第69回 UXを考える(5)
- 第68回 UXを考える(4)
- 第67回 UXを考える(3)
- 第66回 UXを考える(2)
- 第65回 UXを考える(1)
- 第64回 制約条件を考える(10)一を知り十を知る
- 第63回 制約条件を考える(9)
- 第62回 制約条件を考える(8)
- 第61回 制約条件を考える(7)
- 第60回 制約条件を考える(6)
第59回 制約条件を考える(5)
- 第58回 制約条件を考える(4)
- 第57回 制約条件を考える(3)
- 第56回 制約条件を考える(2)
- 第55回 制約条件を考える(1)
- 第54回 物語性について考える(9)
- 第53回 物語性について考える(8)
- 第52回 物語性について考える(7)
- 第51回 物語性について考える(6)
- 第50回 物語性について考える(5)
- 第49回 物語性について考える(4)
- 第48回 物語性について考える(3)
- 第47回 物語性について考える(2)
- 第46回 物語性について考える(1)
- 第45回 適合性について考える
- 第44回 制約条件について考える
- 第43回 サインについて考える
- 第42回 さまざまな配慮
- 第41回 表示を観察する(2)-効率の良い情報入手-
- 第40回 表示を観察する(1)
- 第39回 さりげない“もてなし”を観察する(4)
- 第38回 さりげない“もてなし”を観察する(3)
- 第37回 さりげない“もてなし”を観察する(2)
- 第36回 さりげない“もてなし”を観察する(1)
- 第35回 「結果-原因」の関係から人間の行動を観察する
- 第34回 「目的-手段」の関係から対象物を観察する
- 第33回 マクロとミクロの視点で観察する(2)
- 第32回 マクロとミクロの視点で観察する(1)
- 第31回 階層型要求事項抽出方法-REM(2)
- 第30回 階層型要求事項抽出方法-REM(1)
- 第29回 消費者のインサイトに仮想コンセプトを使って観察する (2)
- 第28回 消費者のインサイトに仮想コンセプトを使って観察する(1)
- 第27回 サービスに仮想コンセプトを使って観察する
- 第26回 サービスを構造的に観察する(3)
- 第25回 サービスを構造的に観察する(2)
- 第24回 サービスを構造的に観察する(1)
- 第23回 事前期待と事後評価の差分からサービスの評価を行う
- 第22回 サービスの設計項目から、サービスシステムの問題点を探る(3)
- 第21回 サービスの設計項目から、サービスシステムの問題点を探る(2)
- 第20回 サービスの設計項目から、サービスシステムの問題点を探る(1)
- 第19回 70デザイン項目を活用してシステム、製品の使用実態や問題点を探る(7)
- 第18回 70デザイン項目を活用してシステム、製品の使用実態や問題点を探る(6)
- 第17回 70デザイン項目を活用してシステム、製品の使用実態や問題点を探る(5)
- 第16回 70デザイン項目を活用してシステム、製品の使用実態や問題点を探る(4)
- 第15回 70デザイン項目を活用してシステム、製品の使用実態や問題点を探る(3)
- 第14回 70デザイン項目を活用してシステム、製品の使用実態や問題点を探る(2)
- 第13回 70デザイン項目を活用してシステム、製品の使用実態や問題点を探る(1)
- 第12回 70デザイン項目とアブダクション
- 第11回 世の中の動向、ファッションを観察する(2)
- 第10回 世の中の動向、ファッションを観察する(1)
- 第9回 俯瞰してHMIを観察する
- 第8回 ユーザとそのインタラクションについて観察する
- 第7回 製品(システム)とそのインタフェース部について観察する(2)
- 第6回 製品(システム)とそのインタフェース部について観察する(1)
- 第5回 直接観察法について-自然の状況下での観察-
- 第4回 観察を支援する70デザイン項目について知る
- 第3回 人間について知る-多様なユーザの特徴を理解する-
- 第2回 人間-機械系について知る-HMIの5側面-
- 第1回 観察の方法