第58回 制約条件を考える(4)

2015.05.22 山岡 俊樹 先生

 製品の形状や仕様は、それに係る様々な制約条件により絞りこまれた結果である。2次元のポスター等も同様に考えることができる。このような制約条件という今まで考慮に入れていなかったフィルターを通してみると、見えなかった世界が見えてくる。

 わかり易い例として、電卓(写真1)を考えてみる。人間側に係る制約条件として、以下の項目がある。

①滑らずに押し易いキー → 押す面が凹状の形状
②キーを分かりやすくする → キーの機能毎の色分け
③表示部分が見やすい → 表示部分が見やすくなるようにユーザの視線が直角になるように角度が付いている
④本体を持ち運びやすい → ラバーをつけるなどの本体側面が持ちやすいように配慮する。携帯性にウエイトを置くならば、そのサイズはどうか。
⑤キーは押しやすい → クイック感があり、押しやすこと
⑥マニュアルを読まなくとも分かる → 使い方が操作部から理解できる。あるいは簡単なマニュアルが裏面に出ている。

 次回で紹介するが、制約には「社会的制約」「空間的制約」「時間的制約」並びに人間に係る制約(思考、運動)と製品・システムに関わる制約がある。これらの観点から電卓の制約条件を探してゆくと、上述した⑥の項目と同じ人間に係る制約条件(思考)の問題が認識できる。⑥でも述べたが、通常マニュアルが無くなっており、一部の機能をどのように使ったら良いのか不明の場合が多いと予想できる。簡単なマニュアルを本体の裏面に取り付けるとか、あるいは収納できるようになっていると非常に便利である。このようなアイディアはそれほどコストアップにならない。

 トイレを清潔に保ちたいのは、公共トイレ管理者の共通の願いである。この場合の社会的制約条件は、ユーザが汚さずに綺麗に使うことである。この場合、「汚さずに綺麗に使う」→①汚さないために物を捨てるな(写真3)という使う前に注意を与える言い方、一方②使用後の感謝を述べる言い方(写真2)がある。同じ制約条件であるが、直接的か間接的に言うのか、あるいは共感を呼び起こすような表現かの違いでもある。学術的には①のような言い方は、恐怖アッピールと言い、②の共感を呼ぶ表現のほうが効果的と言われている。制約条件を考える際、それがユーザにどのような心理面、身体面に影響をあたえるのかも考える必要があるだろう。

 写真4はコーヒーカップであるが、人差し指を取手に入れて飲むデザインとなっている。このコーヒーカップはコーヒーの量が多く、重量があり、このような取手は非常に使い難い。この取手の制約条件はしっかりとコーヒーカップを保持でき、飲みやすいことである。

 容器の形状は飲みやすい形状となっており、その制約条件を満たしている。この例はレストランで見かけたのであるが、ユニバーサルデザインという観点から見ると、少々問題がある。指が太い人、手が震える人などには使えないデザインである。デザイン的に違和感がなくよくまとまっているので、この必要最低限の制約条件を無視して、造形中心にデザインしたのであろう。

 以上の例は身近にある商品に対して、制約条件の観点からチェックしたので、当たり前と思われるかもしれないが、経験のない商品の場合は、この制約条件を考えないと様々な問題点を見過ごすことがあるだろう。この件は、次回紹介したい。

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