第62回 制約条件を考える(8)

2015.09.28 山岡 俊樹 先生

 制約条件は我々が通常気が付かないところでも見ることができる。レストラン、アパレルショップ、眼鏡ショップなど多数の店舗で、意外と顧客を拒んでいる見えない制約条件がある。それは昔から商売をしている店舗でよく見受けられる。店主が店の奥にいて、足を延ばしてスツールに腰を掛けていたり、店の前で店主が難しい顔をして腕を組んでいては、顧客はなかなか入れない。しかも、そのような店は大昔のように商品を並べれば売れた時代の名残のような販売方法を取っている。顧客をワクワクさせるような店づくりをしていない。時代の変化はめまぐるしく、店舗も変化してゆかねばならない。

 店員の態度や店舗のデザインなどが制約条件となり、顧客を遠ざけているのである。販売のコツは、店舗での制約条件を弱くするか、逆に制約条件を強くするかである。販売でのポイントは、商品、接客対応と店舗の総合デザインであると考えている。顧客は商品を買いに来るので、希望する商品が無ければならない。品揃えが大事である。店員の接客態度は顧客に満足してもらうためにも重要な要素である。店舗の総合デザインはインテリアの色彩、照明、商品の配置やその情報などをコンセプトに基づいて、有機的にデザインしなければならない。以下詳説する。

(1)弱い制約条件の場合
①商品:
 品揃えを豊かにする。そのためには、大型店舗にするか、ネット販売にする。
②接客対応:
 大型店舗の場合、コストの関係から少人数の従業員で対応することになり、顧客に満足感を抱いてもらえるかがポイントである。そのために、情報機器を効率よく活用することなどが考えられる。ネット販売の場合は、分かり易く、使い勝手の良いUX(User Experience、ユーザ体験)を感じる操作画面をデザインすることである。
③総合デザイン:
 大型店舗の場合、多様なユーザに対応するので、室内は明るくし、違和感なく入店できるようにする。ネット販売の場合は、雰囲気のある画面をデザインしなければならない。

(2)強い制約条件
①商品:
 店舗のサイズにかかわりなく、商品を絞り込む。ネット販売でも同様。
②接客対応:
 きめ細かな対応を行う。 ネット販売でも同様で、詳しい説明が必要である。
③総合デザイン:
 顧客を絞り込んでいるので、絞り込まれた顧客に適合したイメージに絞り込む。ネット販売でも同様で、ターゲットの顧客に合う操作画面のイメージを作らなければならない。

 レストランも同様である。
 弱い制約条件の場合は何でもありの総合スーパーなどに置かれてあるフードコート であり、強い制約条件では、本格的な専門のレストランである。ご飯類と関係のない麺類を出すような中途半端なお店は受け入れないだろう。フードコートでも商品の価格は安いが、それぞれ専門のお店である。

 この制約条件から既存のお店を見ると、意外と中途半端なお店が多いことに気が付く。顧客に対する弱い制約条件で多様な顧客を受け入れなければならないのに店舗が小さく、品揃えが難しい場合がある。このような場合、強い制約条件の店にするか、同様の他業種の店とアライアンス(alliance、提携)を組んで対応するか、様々なビジネスモデルを考えなければならないであろう。

※先生のご所属は執筆当時のものです。

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