第32回 マクロとミクロの視点で観察する(1)

2013.02.26 山岡 俊樹 先生

 世の中の動向を探る方法として、10回11回でファッションを取り上げ解説した。今回はファッションに限らず、より広く世の中の動向を探るマクロの視点とより焦点を絞ったミクロの視点による観察方法を紹介する。

1.マクロ的視点による観察
 世の中の動向を探る場合、衣食住に注目するとよい。これらは生活必需品なので、人々が関心を持ち、その価値観が表出するからである。「衣」に関して、流行に左右されるので、衣服を観察すると動向が分かる。「食」でも同様である。衣服よりもその動きはダイナミックではないが、生活に直結するオブジェクトなので、生活の動向を把握することができる。例えば、以前、ミネラルウオーターの種類が余り多くなかったが、最近、炭酸入りとか、様々な味付けをしたタイプが売り出されている。これらの事象は、健康志向が高まり、ミネラルウオーターを飲むユーザが増えたが、ただ水を飲むだけでは物足りず、これに答えるために様々なタイプが増えたものと予測できる。最後の「住」は、その性格上、世の中の流れに一歩遅れるが、動きを見ることができる。住宅展示場に行くと、現状の問題点に対する各社の解決案や提案を確認することができる。例えば,シックハウス症候群、地震や省エネなどの対策を競っているが、何がユーザにとって、重要な要求事項か分かる。
衣食住の視点から得られた要求事項を整理し、構造化した最上位項目が、世の中の潮流と考えられる(図1)。

2.ミクロ的視点による観察
 観察したいオブジェクトやユーザの行動に対して、通常から逸脱した使い方や行動についてメモをするか、カメラで撮影する。そして、なぜそのような差分があるのかその文脈から考える。例えば、料理作業で、常温で冷やしてから冷蔵庫に入れるのを冷やさず直接入れたのは?なぜかと考える。この様に収集したデータからユーザの本音(インサイト)を探り出すのである。探り出すとき、何故そのようなことをしたのか聞く。抽出方法はマクロ的視点で紹介した方法と同じである。 福岡の大濠公園を歩いていたら、下記の看板が眼に入った(図2)。この公園はかなり広く自転車の通行も許されており、公園管理者側に自転車に関する様々な苦情などがある為か、この様な看板を立てたのだろうと推察される。通常はこの様な看板は不要であるが、安全性確保の見地から必要になったのであろう。通常から逸脱した現象ととらえることもできる。実は著者はある学会内のプロジェクトで、自転車の研究を共同で行っているのであるが、この看板から自転車の設計や活用の主要ポイントが分かった。ユーザにアンケートをしなくともよいので効率的であるし、ユーザにアンケートしても抽出できないかもしれない。

3.撮影したデータを基に議論を行う
 1と2の作業は、一人で行っても良いが、有用な情報を得るには複数人で行うのが望ましい。各自、デジタルカメラで撮影し、1カット毎、A4サイズの用紙にデジタルデータ貼ってゆく。これをコンピュータ上で行ってもよい。この際、気が付いた事項やそれに関するインタビューデータをメモしておく(図3)。気づきやメモをする際、システムの目標を決める時に使う1.機能性、2.信頼性、3.拡張性、4.効率性、5.安全性、6.ユーザビリティ、7.楽しさ、8.費用、9.生産性、10.メンテナンスの観点からもいろいろ考えてみる。この様にして得たデータは上述した方法で分析し、本音を探り出す。

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