第12回 70デザイン項目とアブダクション

2011.01.14 山岡 俊樹 先生

 推論をするには、演繹的推論、帰納的推論とアブダクション(abuduction)がある。推論するには、ルール(例:風邪を引くとくしゃみをする)、事例(例:風邪である)及び結果(例:くしゃみをする)を活用して行う。演繹的推論では、ルール→事例→結果から結果を推論する。例で言えば、風邪を引くとくしゃみをする→風邪である→くしゃみをする、となる。帰納的推論は事例からルールを作り出すので、事例→結果→ルールである。例で言えば、風邪である→くしゃみをする→風邪を引くとくしゃみをする、となる。一方、アブダクションは、結果→ルール→事例であるので、例で言えば、くしゃみをする→風邪を引くとくしゃみをする→風邪である、となる。

 製品、システムやユーザを観察するとき、このアブダクションの構造を頭に入れて観察すると良い。例えば、図1は某店舗の2階に通じる階段に見られた痕跡である。我々は通常、この痕跡(結果)を見て、人が多く床を足で踏むとその痕跡になる(ルール)ことから、多くの人が階段の真ん中を歩いた(事例)ことが分かる。

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 図1 階段にある痕跡

 それでは図2の電子辞書の操作部分を観察して、どこが問題であるか分かるであろうか?オブジェクトを見て、それがあるルールに適合しているのか、分からないと問題抽出ができない。つまり、ルール=人間工学の知識が必要である。この電子辞書の場合、ボタンが小さく、しかも凸状の形状をしていると、滑って使いにくいという人間工学上のルールがある。勿論これは絶対的な条件ではないが、かなり当てはまる。現に、私が急いで英単語を調べたい場合、ボタンが小さくしかもトップがラウンドしているので、滑る感じがして非常に使いにくかった記憶がある。製品やシステムを観察する場合、第4回目で紹介した70デザイン項目をルールとして使うと様々な問題点を抽出することができる。この場合はフィット性が問題なのである。この電子辞書の場合、使いにくい(結果)をみて、ボタンが小さく、凸状の形状をしているので、滑る=指とのフィット性が悪い(ルール)ことから、小さい凸状のボタン(事例)のためということが分かる。

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 図2 電子辞書

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