第6回 構造の把握(1)

2016.11.22 山岡 俊樹 先生

 あるモノを見るとき、それを取り囲む状況も観察してみる。そうするといろいろな関係にあるのが分かる。例えば、あるモノとあるモノがあるが、お互いに独立した関係にあるとか様々なことが理解できるようになる。このようにして考えると以下の3つに関係を分類することができる。

①独立関係:無関係の場合と関係のある場合がある。
②包含関係:複数のモノが同じか、一方が他方に包含される関係をいう。
③一部包含関係:一方が他方のモノと一部重なっている関係である。

 部屋に置いてある目覚まし時計は、その部屋のユーザとは双方向の関係にあるといえる。ユーザは時計を見て今、何時か情報を受け取り、更に時計を見て(情報を取りに行き)何分後に来客が来るなどと確認をすることができる。この目覚まし時計は乾電池を電源とするならば、この乾電池は目覚まし時計に対して、包含関係にある。またこの目覚まし時計はデジタル表示で、スマホから時間操作ができる場合、一部包含関係にある。

 観察の場合、システムを対象にする場合が多いので、システム内での人と人の関係、人とモノとの関係、人と環境およびモノとモノの関係に分けることができる。

①人と人の場合:対立関係、双方向の関係があるだろう。あるいは、一部包含関係も見られる。
②人とモノとの関係:双方向、一方方向の関係が主であろう。
③人と環境との関係:人によっては独立関係と考える人もいるかも知れないが、基本的に人は環境の中で生存してきたので、包含関係や一部包含関係にあるといえる。
④モノとモノの関係:①から③までの関係を見ることができる。

 観察を行う際、上記のフレームの視点で行うと気がつきにくく見えない関係を把握することができる。

 このフレームを著者が考えている制約条件による観察方法に包含させて活用するとよい。第57回のコラムでは制約条件に基づく発想法であるが、基本的には同じで観察に適用した方法である。①社会・文化・経済的制約、②空間的制約、③時間的制約、④製品・システムに関わる制約、⑤人間に係る制約(思考、感情、身体)の5つの制約条件から、分解してゆき、あるべき姿を導き出す。具体的に第59回のコラムで紹介した京都のゴミ箱の例で考えてみよう。

①社会的制約
 ゴミはゴミ箱に捨てるという社会的制約がある。

②空間的制約
 京都の街の中に置かれるという制約からゴミ箱の本体色は落ち着いた色で、周囲と調和した形状のデザインが必要である。

③時間的制約
 長期間設置されるので耐久性、生産性他の条件から、材料を鉄板とし、塗料は防錆性を高める塗料とする。

④人間に係る制約(思考、運動)
 ゴミ箱と認知され、その使い方が容易に推測されることが必要である。

⑤製品・システムに関わる制約
 京都という国際的な観光都市の特性から、自動化されたゴミの回収システムを考える。

 以上の事項から、京都市内に置かれるゴミ箱のあるべき姿がある程度読み取ることができるだろう。

 このあるべき姿は現状の様々な制約から導き出されたもので、理想の姿ではなく、現状で一番合理的に判断できる姿という意味である。通常、このあるべき姿と現状との差分を検討したり、現状からこのあるべき姿を修正したり、するのである。例えば、前述の京都のゴミ箱の場合、市の現状の財政状況から自動化されたゴミ回収システムを取りやめるなどの修正が考えられる。

 この一連の作業により観察するシステムの本質が理解できるようになる。このあるべき姿は再定義されたオブジェクトとしても理解することもできる。再定義というのは、原点に戻り、あるべき姿を求めることでもあるので、同じ意味である。

 更に、今回紹介したフレームを活用することにより、より精緻な構造を把握することができる。通常、観察する場合、頭の中で構築されている曖昧な基準、あるいは常識に照らし合わせて、問題点を抽出している。従って観察基準が甘いので、問題点の妥当性が問われる。しかし、 5つの制約条件やフレームを使って、頭の中に精緻な基準を作ることができるので、観察データの妥当性は高まると考えられる。

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