第13回 70デザイン項目を活用してシステム、製品の使用実態や問題点を探る(1)
2011.02.10 山岡 俊樹 先生
指標(index)は、知覚しにくい事象を近接性(空間的、時間的、因果関係、全体と部分)により、関係づける記号である。例えば、風邪(原因)を引いた場合、体温が上がり、咳がでるといった症状(結果)が出る。通常、我々はこの症状から知覚できない事象を風邪と判断する。この場合、因果関係の近接性に基づいて判断しているのである。黒雲は雨が降る兆候を示すので、黒雲は雨の指標である。
この指標の考え方、つまり、痕跡と手がかりを使って、システム、製品の使用実態や問題点を抽出するのである。70デザイン項目は、製品やシステム設計に必要な設計項目であるが、前回説明した推論時のルール、痕跡や手がかりとしても活用できる。システムや製品は、こう使用してほしいとの基本的使い方を規定しているが、痕跡や手がかりから規定と違った使い方をしている場合、そこに改善の余地を見ることができる。以下に示すのが70デザイン項目である。
(1)ユーザインタフェースデザイン項目(29項目)
(2)ユニバーサルデザイン設計項目(9項目)
(3)感性デザイン項目(9項目)
(4)安全性(PL)項目(6項目)
(5)ロバストデザイン項目(5項目)
(6)メンテナンス(保守性)項目(2項目)
(7)エコロジーデザイン項目(5項目)
(8)その他(HMIの5側面他)(5項目)
(8)その他(HMIの5側面他)(5項目)は第2回目に紹介したので、今回は(1)ユーザインタフェースデザイン項目(29項目)を紹介する。このデザイン項目は、操作部分や操作画面デザイン構築用の項目である。
1.寛容性・柔軟性
2.習熟度対応
3.ユーザの保護
4.ユニバーサルデザイン
5.異文化対応
6.楽しさ
7.達成感
8.ユーザの主体性の確保
9.信頼感
10.手がかり
11.簡潔性
12.検索容易性
13.一覧性
14.マッピング
15.識別性
16.一貫性
17.メンタルモデル
18.情報の多面的提供
19.適切な用語・メッセージ
20.記憶負担の軽減
21.身体的負担の軽減
22.操作感
23.操作の効率
24.強調
25.アフォーダンス
26.メタファ
27.動作原理
28.フィードバック
29.ヘルプ
特に、10.手がかり、 14.マッピング、16.一貫性、17.メンタルモデル、19.適切な用語・メッセージ、 27.動作原理、28.フィードバック、のデザイン項目は重要なので、この視点から探索してゆく。
下図はある学会の大会のレジメをアップロードするための画面である。手順は、参照のボタンを押して、アップロードするファイルを取り込み、その下にある長いボタンを押して送信する仕組みである。しかし、この送信ボタンが長く注意表示のように思われて、その右に位置している削除ボタンかと勘違いしたりして戸惑った。対策として、ユーザはこの種のタスクに対して時間を掛けて操作しないので、10.手がかりとして、登録・再登録の表示を強調(24.強調)し、瞬時に目に入るようにデザインしなければいけない。
※先生のご所属は執筆当時のものです。
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