第20回 人間を把握する(2)
2018.01.26 山岡 俊樹 先生
今年の正月、家族で、とある飲食店に行きカウンターに座り注文をした。家内がトイレに行こうとすると、店主が今トイレは使用中と制止した。結構高圧的な響きであった。この店主は店員に対しても威圧的な態度を取っていた。この店はどうやって食べているのか、考えていると、固定客を掴んでいるので安泰というわけである。野球などの大会を定期的に開催しているらしく、その情報が壁に掲げられていた。多分、このようなシステムでビジネスを継続しているのだと思う。
また、ある蕎麦屋の話である。入店して、そばを頼んだのだが、専門の蕎麦屋なのにワサビが2cm角程度のパックに入っているのが出てきた。そばの専門店なのに、なぜこのような手抜きをするのだろうと考えていると、ここでは上の階でアパートを経営しており、納得した。
さらに、こういうお店もあった。カレー屋なのだが、どうも入りにくい。また、このお店の売りがよく分からない。味が最高に良いのか、どこどこの国のカレーとか、インテリアが凝っているとか、店主の思いが伝わってこない。お店の入り口は大きなガラスの窓により開放感がある作りであったが、いつも、顧客がいなかった。当然のことながら、閉店となった。
どうも我々は目標が必要のようである。最初の例のお店では、お店を大きくしたい、もっと儲けたいなどと目標があれば、いろいろ考えて威圧的な態度はとらないであろう。二番目の例でも、同様である。どうすれば顧客が喜んでもらえるのか、真剣に検討するだろう。三番目の例は何も考えていない例である。考えれば、キャッチコピーを作り、店頭に表示して、顧客の目に留まるようにするだろう。また、販売に関する様々なノウハウ本を読み、どういう対応をすべきか、真剣に考えるはずである。
システムを構築する際に、必ず目的を決め、目標を定めなければならない。著者の考える目的は、5W1H1F(Function)+期待である。目標は目的を受けて、具体的に対応を考えることである。目的を考えるには、①誰が、②何を、③何時、④どこで、⑤なぜ、⑥どうやって、⑦機能、⑧期待 を検討すればよい。特に期待が重要で、どういう価値や意味を提供できるのか検討しなければならない。前述の三例では、顧客にどういう価値を提供し、どういう意味かを分かってもらうようにしなければいけないだろう。そして、顧客はその期待を受けとめ、共感する場合、あるいはそれが顧客の期待と同じならば、商い、ビジネスが成立する。この目的、目標を常に考えることは、人間の世界でも必要である。この目的、目標を持っている人は、何らかの売り(期待)を持っている人材で 、困ったときの頼りになる。
※先生のご所属は執筆当時のものです。
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