第63回 制約条件を考える(9)

2015.10.26 山岡 俊樹 先生

 前回、制約条件から様々なお店について考察した。それではアパレルショップのインテリアデザインやレストランの入り口のデザインをどう観察したら良いのだろうか?

前回、制約条件の弱い場合と強い場合に述べたが、観察のポイントは3つある。著者は長年、情報デザインに関して、研究と実践を行ってきたが、画面デザインの可視化の3原則(詳細はUX・画面インタフェースデザイン入門、日刊工業新聞社、P11、12参照)を提唱してきた。これは複数枚ある画面をデザインする際、①強調(アクセント)、②簡潔性、③一貫性、で可視化するという原則である。重要な情報は強調し視線の誘導(ナビゲーション)をはかり、レイアウトは簡潔にする、レイアウトの簡潔性も視線誘導の手段でもある。一度取り決めたデザイン事項は一貫性を保つ(例えば、赤色は危険と決めたならば、全画面で守る)ことである(図1)。この原則は複数枚の画面を対象にしているが、アパレルショップなどのインテリアやレストランの入り口のデザインにも適応ができる。アパレルショップなどのインテリアの場合、顧客が店舗空間に入ったときから出るまでの目に入った連続シーンを何秒毎のシーンに分割すれば、画面デザインと同じこととなり、この原則を使うことができる(図2)。以下、制約条件の違いで、どのように3原則を活用すればよいのか説明する

(1)制約条件の弱い店舗空間の場合
 顧客が入り易く、展示商品をくまなく見てもらうために、照明は均質な状況にする。しかし、それでも特に売りたい商品があるならば、照明や展示台などで強調するとよい。

(2)制約条件が強い場合
 店舗のディスプレイやインテリアデザインの雰囲気により、顧客にある種のメッセージ(ストリー)を提示するので、可視化の3原則を活用する。照明、ディスプレイや展示台を活用して、売りたい商品を強調する。一貫性は全体の調和にも関係する。

 レストランの入り口のデザインも同様である。制約条件の弱いレストランの場合、最大のポイントは料理のサンプル展示のデザインである。料理をいかにおいしく見せるかというのがポイントで、そこに割引サービスなどとPOP広告(Point of Purchase)を置くのは料理で勝負していないこととなり、顧客に見透かされる。料理のディスプレイでもストリーが大事で、料理に絡む写真を置いたり、料理サンプルの背景にはサンプルを引き立たせるような暗めの色が重要と思われる。しかし、実際様々な所で観察すると料理サンプルとなじむような色彩が多く、料理の良さが引き立っていない。制約条件の強いレストランの場合、料理のサンプルを置いていないので入口のデザインは店のコンセプトに基づいたデザインにすればよい。

 観察を行う際、可視化の3原則から行うと様々な店舗における視覚情報の問題点を把握することができる。店舗デザイナーはそれなりのノウハウでデザインをしていると思われるが、ユーザの情報処理の観点から観察するとなかなか良いデザインが無いのが分かる。まず、何か強調をして顧客の視線誘導(ナビゲーション)を図り、そこでこのお店はこういうコンセプトで商品を提案しますというストリー(メッセージ)を分かり易く提示しなくてはならない。

 某ショッピングセンターに出かけ、いろいろな店舗を見たが、ほとんどの店がデザイナーは店舗の雰囲気作りまでで、明確なストリーをなかなか確実に顧客に提供できていないように思われた。そもそも店舗のコンセプトが曖昧だとストリーを明確に打ち出せない。店舗で商品を売るというのは、システムデザイン、つまりサービスデザインであり、構造的に考えていかないと売れない難しい時代になっていることを認識する必要があるだろう。

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