第2回 メンタルモデル(1)

2016.07.26 山岡 俊樹 先生

 前回は身体面でのモデルであったが、頭の中で操作や行為を考える場合は、ユーザの持つメンタルモデルを基準にして操作、行動している。メンタルモデル(Mental model)には構造を考えるStructural Modelと主に手順を考えるFunctional Modelがある。鉄道駅で鉄道の配置を地図上に描いたイラストと各駅の順番を描いたイラストを見ることがある。我々はこの2つのモデルにより理解でき、何をすべきか理解できるのである。券売機、ATMや病院・ホテルでの精算機などの操作画面で、ユーザビリティが悪いのは、この2つのモデルを有効に活用していない為である。最初に何をしていいのかイメージがわかないのはStructural Modelを十分に考えていない為である。また、どういう順番で操作したら良いのか不明の場合は、Functional Modelを検討していない為である。

 現在、このメンタルモデルをサービスの理解や構築に使えないかと考えている。本稿で言うサービスは広い意味で使い、サービスを生産者と消費者がやり取りをする有機的システムと定義する(山岡俊樹編著、サービスデザイン、共立出版より)。サービスは一種のシステムでもあり、メンタルモデルが使えると考えるが、商品を確認できない場合が多いので、基本的に心理面の不安要素がある。サービスを検討する際、従来のメンタルモデルだけではなく、この不安要素も加味する必要があるだろう。例えば、レストランでは事前に料理の味見をさせてくれないので、どんな料理が出てくるのか不安である。特に、海外に行くとレストランに料理のサンプルが無いので、メニューの文字だけで判断しなくてはならず、非常に不安である。その為、ワインの場合、商品にその特性(甘い、辛い、原産地などの情報)が書かれてあり、不安を除くように配慮されている。また、料理の出てくるまでの時間も不安材料である。後から入店したお客の方に早く料理が運ばれると不安になってくる。このように不安の要素を考えるとStructural ModelとFunctional Modelに係る不安の要素があることに気が付く。前者はサービスがどういう構造となっているのか分からないと不安で、例えば、このレストランはどういう料理を売りにして、もてなしはどうなのか?後者に関しては、料理の食べる順番、食べ方が分からないなどの不安があるだろう。両者に共通の不安の要素は、時間である。時間が限られているので不安なのである。仮に、1日かけて食事をするならば、知らない料理用語があれば、辞書で調べればいいし、食べ方が分からなければじっくり聞けばよい。昔、読んだ本にプロとアマチュアの違いは時間と書かれてあった。プロの医師は患者の悪いところを手術して、即治すことができるが、アマチュアも患者を治すことができるが膨大な時間がかかる。つまり、医学部に入学し、医師にならなければならないからで、そのため時間がかかるという訳である。当然ながら習熟度の差は、時間差となって表れてくる。

 メンタルモデルのStructural ModelとFunctional Modelは空間に関する事項である。我々は時空間の中で生存しているので、空間の情報だけでなく、時間の情報も必要になってきている。つまり、我々を取り巻く環境やシステムが複雑になり、特にサービスの時代になると、空間の情報だけでは対応が困難になっているためである。例えば、羽田空港でそのスペースが複雑で広くなったためか、乗客が到着後向かうところまでの距離を表示している。これは、向うまでの時間の推定が今まで難しかったので、距離を示すことにより、不安をなくすための手段と考えられる(図は東京メトロのサイン)。

 以上からメンタルモデルを活用することにより、サービスを構築、評価あるいは解釈することが可能と考えている。また、特に、Structural Model、Functional Modelだけでなく、時間のモデルをTemporal modelとして位置づけしたい。このTemporal modelは心理的要素が強く、客観的に表示するパラメータを検討する必要があるだろう。

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