第49回 物語性について考える(4)

2014.08.26 山岡 俊樹 先生

  前回では物語を分析あるいは構築する3つの側面として①有用性、②利便性、③魅力性を挙げた。今回はこの3側面に対し、構造と時間の2つの切口を考える。この2つの側面を考えることにより、立体的に検討するのが可能となる。

 なぜ、構造と時間なのか?これはメンタルモデルを構成するのがstructural modelとfunctional modelである。前者はhow it works、システムの構造や動きを意味し、後者がhow to use it、システムの操作の手続を意味する。メンタルモデルのこの2つモデルを検討しているうちに、様々な事象にも適応できるのが分かってきた。structural modelが構造の概念を示唆し、functional modelが手順から時間の概念を示していると考えることができる。例えば、パン屋のショーケースにパンを並べる場合、菓子パン、食パンなどのグループごとに分け、更に各グループの中では分かり易い順番で展示されている。つまり、グループごとにするのが構造化であり、この中の順番が手順でもあり、時間である。

 物語でも同様に、有効性、利便性、魅力性の3側面の構造を考え、例えば、利便性の構造の例で、ボルボやベンツの安全性や快適性が構成要素となる。次にその構成要素を時間軸上でどう展開させてゆくのか考えてゆく。例えば、先の安全性について、その要素を時間軸上でどのように展開させてゆくのか検討する。

 今まで製品やシステムに構造と時間の観点から分析、物語から構築する考え方を述べたが、他のオブジェクトにも適応が可能である。以前述べたが、風景写真と高齢者の顔写真を比べた時の印象は圧倒的に高齢者の方が強い。なぜであろうか?構造と時間の観点から分析してみる。風景の美しさは構造的、時間軸から理解するのが困難で、つまり風景の構成要素は理解できるが、時間軸上でどのように変遷を重ねてきたのかが不明のため、あくまでも表面上の美しさが前面に出てきてしまう。夜景もそうで、真っ暗闇に点灯する光の美しさであり、それ以上の解釈は困難である。一方、高齢者の顔写真の場合、表面的な美しさよりも、本人が過ごしてきた生き様が顔に写像され、共感を呼び、感動を引き起こすのである。高齢者の顔写真の構造とは、顔の輪郭、しわ、髪、肌色が構成要素であり、それらが本人の生き様、履歴という時間軸から写像されたものと理解することができる。リンカーンも40歳過ぎたら自分の顔に責任を持て、と言っている。

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