第34回 「目的-手段」の関係から対象物を観察する

2013.05.13 山岡 俊樹 先生

 あるバス停に置かれてあるベンチとそこから200mほど離れた歩道に置かれたベンチの仕様が異なっていたので、気になった。そこで公共用に使われるベンチの機能を分解して考えてみる。機能を分解するときVE(Value Engineering:価値工学)の「目的-手段」の関係を用いて分解してゆく(図1)。

 この場合、「公共のベンチに座る」という機能を目的と仮定し、その目的を実現させるための手段を考える。すると、「頑丈である」「耐久性がある」「誰でもアクセスが容易で、気楽に座れる」などが考えつく。次に、これらの項目を目的として、同様に分解してゆく。頑丈である→石、金属などの素材を使う、耐久性がある→石、金属などの素材を使う、誰でもアクセスが容易で、気楽に座れる→凹凸が無く、シンプルな形状などが考えられる。そこで、これらの分析結果と図2、3と比較してみる。図2では、バス停に置かれてあるので、通常、お年寄り1-2名程度が座り、その後ろに乗客が並んで立って待っている。座るのは短時間である。その為か、石と金属板でデザインが構成さ、シンプルなデザインであり、合理的である。一方、図3では、座面に木材を用い、半円状のパイプが中央で座面を仕切っている。木材の使用は耐久性に疑問符が付く。置かれている環境から使用時間はバス停のベンチと比較して、長いと想像される。パイプで仕切っているのは、治安上ここで寝かせないためなのだろうか?木製の座面でユーザに快適性を提供するという意図ならば、寝かせないというのは矛盾している。木の下にあるベンチで、木漏れ日を浴びながら、ゆっくり過ごしてもらいたいという意図で、木製の座面にしたのではないだろうか。そうならば当然、横になりたくなるのは自然で、それをパイプが阻止をしているというのはおかしい。また、比較的長くゆっくりと座ってもらうならば背もたれもほしい。座面を木材にすると、メンテナンスが大変でランニングコストがかかる。それにもかかわらず木材にしたというのは、木材にしてリラックスして座ってもらいたいという強いコンセプトの表れであろう。パイプを座面の真ん中に置くことは、マイナスの要因として働くのではないか。寝かせないで、単に座ってもらうという意図ならば、金属や石などの無機系の素材にした方が良いだろう。こういう観点で海外のベンチを見ると、背もたれのついた鋳物製のベンチが多い。

 

 以上から図2のベンチのコンセプトは明快である。図3の方はコンセプトが中途半端ではないだろうか。直感的に対象物やシステムを観察するだけでは、構造的にそのデザインの妥当性を把握するのが困難である。

 

 観察するシステムについて、その環境や文脈を考慮して「目的-手段」の関係から分解してゆくと必要な要求事項を抽出することができる。これは構造的にものを見てゆく方法である。抽出された要求事項と現状のデザインとの差分を見て判断することができる。今回はシステムについて紹介したが、人間の行動でも同様である。

 

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