第38回 さりげない“もてなし”を観察する(3)

2013.09.17 山岡 俊樹 先生

 前回に引き続き、ラスベガスの観察について述べる。ラスベガスは砂漠の地に作られた人工の街である。従って、そういう土地柄か水に強い執着があるようで、前回でも述べたがメインストリートの至る所に噴水があり、建物中にも滝や水をたたえた大きなスペース(図1)がある。


 あるホテルでは建物の中にイタリア・ベネチアの町並みを再現し運河を作り、そこでゴンドラを乗る体験もすることができる (図2)。


 模倣の作り物の世界であるが、現に実在を超えた一つの存在として、認められているので、世界中から観光客が訪れるのだろう。無から有を生むというシステム設計の話でもあり、サービスデザインの話として捉えることもできる。ラスベガスを観察して、気がつくことは、(1)水に関するディスプレーが多い、(2)イタリアに関する事項が多い(ホテル名など)、(3)道路、庭園の手入れがよい、(4)ギャンブルができる、(5)広告がない(ショーなどの広告はあるが、車や電気製品などのラスベガスと関係のない広告は無い)、(6)緑が比較的多い、(7)一つのホテルがテーマパークとなっている(Treasure Island, Veneziaなど)などである(図3)。


 これらの観察事項から浮かび上がってくるラスベガスのコンセプトは、来訪者に気持ちよく、新しい出会いの場を通して良い体験をしてもらうことであろう。その為には、サービス業の宿命であるが、常に新しいネタが必要で、それが各ホテルで行っているショーであり、様々なイベントであろう。サービスをハード系と接客などのソフト系に分けて考えてみると、ラスベガスはどうもハード系にウエイトが置かれているようだ。接客はディズニーランドのような接客は期待できず、すべて事務的というのは私だけが感じていることであろうか?しかし、ホテルのハウスキーパーの女性から廊下で挨拶を受けたのは印象的であった。数年前,ニューヨーク・マンハッタンでこのホテルの10倍もするホテル代を支払った高級ホテルでは,何の挨拶もなかった。ということは、我が国と比較しても接客サービスは劣るが、ラスベガスは観光で市の財政をまかなっているので、米国の他の都市よりもサービスの意識は高いのかもしれない。一方、京都の老舗の旅館では、設備などのハード系よりも、旅館全体の雰囲気、食事や接客の良さで、評価が極めて高い。こう考えるとサービスシステムを構築する際の戦略が見えてくる。ラスベガスと京都の老舗旅館に共通する事項は、物語性(ストリー性)であり、共感を得た体験であろう。この2つのキーワードの上にもてなしが位置づけされた構造がサービスに限らず、21世紀のモノ作りに必須な必要十分条件になると考えている。

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