第69回 UXを考える(5)

2016.04.27 山岡 俊樹 先生

 今年6月に出版する「サービスデザイン」の本の中で紹介しているが、UXは機能、ユーザビリティの上に立脚していると考えている。UXはユーザ体験なので、その体験に一番影響を与えるのがユーザビリティと機能である。

 そうするとユーザビリティは「人間―機械・システム」や「サービスデザイン(接客面)項目」に係ってくるので、これらの項目の下位項目を抽出すれば、UXとして何をすべきか分かる。「人間―機械・システム」の下位の項目が70デザイン項目であり、「サービスデザイン(接客面)項目」の下位の項目として3項目が準備されている。勿論、ユーザビリティをサポートすべく、機能は十分満足できるレベルであることが必要である。

 最近、体験した例を検討してみよう。JR品川駅近くに林立している高層ビル街に行った際、サインが体系的に表示されておらず、特に一貫性が無いので、たどり着くのに時間が掛かった。文字のサイズ、表示パネルの取り付け位置などがばらばらであり、よく分からず心理的なストレスとなり、良いUXとは言えないレベルであった。このような問題点は70デザイン項目のユニバーサルデザインの中の「⑨情報・操作の連続性の確保」の項目から説明できる。つまり、ユーザが情報入手する際、あるいは操作を行う際に、それらの連続性を確保できるようにデザインすることである。

 良い例を紹介しよう。下図はある電気製品の量販店で見たサインである。エスカレータに乗っていると何階に向かっているのか分からず、エスカレータの周囲を見回してやっとわかるというのが現状である。しかし、下図では2基あるエスカレータの中央部分に階数表示がしてあり、遠くからでも瞬時に分かるので便利であり、良いUXを感じる。

 このような人間と機械・システムの関係から生じるUXは以下の6つの感覚を生じると考えられる。

① 非日常性の感覚
② 獲得の感覚 
③ タスク後に得る感覚
④ 利便性の感覚 
⑤ 憧れの感覚 
⑥ 五感から得る感覚

 今回のエスカレータの場合は、「④ 利便性の感覚」を得たのである。以下、6つの感覚の説明をする。

 ①非日常性の感覚は、日常生活ではあまり体験したことがないような感覚をいう。②獲得の感覚は、知識を得たり製品などを購入したり、もらったりしたとき得られる感覚である。③タスク後に得られる感覚は、何かをしたときの達成感、一体感、充実感などである。④利便性の感覚は、製品やシステムの持つ利便性に対して得られる感覚である。⑤憧れの感覚は、ブランド品などに対する憧れの感覚である。⑥五感から得る感覚は、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感から得ることができる感覚である。

 以上からUXをデザインしたり、分析する時、UXを実現する要素を検討し、UXにより得られる感覚を推測して、検討を行うとよい。

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