第9回 俯瞰してHMIを観察する

2010.10.22 山岡 俊樹 先生

 ヒューマン・マシン・インタフェース(人間-機械系、以下HMI)そのものをみるのではなく、それに係わる環境面や運用面を観察する。それにより、HMIだけでは見えなかった問題点や特徴を把握することができる。特に、運用面はHMIに影響を与えている点がわかり、サービスの視点からも分析が可能である。製品やシステムの設計者のコンセプトを推量する仮想コンセプト法についても述べる。
 

(1) 環境面や時間面を観察する
 照明や空調などの環境面と時間面を観察することにより、HMIだけでは見えなかったモノを調べ、潜在ニーズを抽出することができる。例えば、液晶プロジェクターを使用するとき、なぜ部屋を暗くしなくてはならないのか?それは輝度が低いためで、HMIだけでなく環境との関係を調べることにより認識することができる。以前、ATMの操作画面をデザインしたことがあるが、使用環境をあまり考えずに、画面の審美性に気を取られコントラストが弱いペールトーンの配色でまとめた。確かに、綺麗な色調なのだが、ある使用環境では天井に取り付けられた水銀灯などで、操作画面は高照度となっており、非常に見難い画面となっていた。このATMの操作画面の例では、様々な環境を通して操作画面の問題点を抽出することができる。
 

(2) HMIやサービスの運用面 (操作支援、メンテナンス、他)を観察する
 HMIを運用する側面や顧客とサービス提供者の関係を観察することにより、新しい知見を得ることができる。新幹線の改札口や病院の精算機には、係員がいてユーザの操作の手助けをしている。これらの機械では、ユーザが単独で操作ができなかったり、誤ったりする場合があるので、人間による支援を行っているのである。公共トイレの蛇口のデザインはいろいろあり、自動式から手で回す方法があるなど機能も多様である。しかし、トイレで蛇口の操作方法が分からず困ったという話は聞かない。機能が簡単ということもあるが、蛇口の操作に関するメンタルモデル(機械に対する操作イメージ)が殆どの日本人には構築されているためである。病院の精算機などに係員が付いていることは、まだユーザのメンタルモデルが構築されていないので、操作ができないユーザがいることを暗示している。このように運用面を見ることにより、その製品の操作性のレベルを推測することができる。

 一方、サービス面でもその運用面を観察することにより、問題点を抽出することができる。以前、ある温泉の旅館に泊まったのであるが、夕食のデザートの時、オレンジをカットせず持ってきたので、手が果汁だらけになった。このような顧客に対する配慮が欠けているためか、この旅館では、他のホテルや旅館が満室というのに、殆ど空きの部屋だらけであった。

 このようにHMIやサービスの運用面を観察することにより、本質的な本題点を抽出することができる。
 

(3) 仮想コンセプトから解決案を考える
 仮想コンセプトとは、既存の製品やシステムに対し、推測したコンセプトをいう。仮想コンセプトを構築する方法は、前述した製品の特徴、使用環境や運用面から推測し、その得られたデータを構造化して、まとめる。つまり、デザイナーの思いや考え方や使用環境・運用面が、製品各部に埋め込まれているので、それらから仮想コンセプトを推測するのである。先ほど蛇口は操作が分からないタイプは無いと言ったが、実はある航空機のトイレの蛇口でなかなか分からず困ったことがあった(図1)。蛇口の先端に付いている温水と冷水のボタンが小さいため分からなかったのである。この蛇口の仮想コンセプトとして、蛇口をスッキリまとめたいということであろう。この仮想コンセプトに対して、改善を行うのが修正コンセプトである。この場合、修正コンセプトとして、多様なユーザが使えるように、ボタンを大きくし、文字情報も加えるということが考えられる。この修正コンセプトを具体化した蛇口が別の航空機にあった。これが図2である。

 このように日頃何気なく見ているオブジェクトでも、デザイナーや設計者がどのようなコンセプトで作ったのか推測するのである。そして、使用空間や文脈などから修正コンセプトを作り、それに基づいて新しいデザイン案を構築することができるのである。
 

no1jyaguchi.jpgのサムネール画像

図1 操作が分かりにくい蛇口

no2jyaguchi.jpgのサムネール画像

図2 操作が分かりやすい蛇口

 

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