第67回 UXを考える(3)

2016.02.24 山岡 俊樹 先生

 最近、用事で松山市内を走っている路面電車(伊予鉄道)に乗車した。その時、乗客に対する運転者の対応が非常に親切で驚いた。車内放送で安全運転に心がけると宣言し、様々な情報を乗客に伝えていた。車内の運転者名を表示するボード面に、「私は安全運転をいたします」と書かれてあった。バスで同様の表示をしながら、仲間のバスが来ると運転中にもかかわらず片手をあげて合図をしているシーンをよく目にする。こういう行為は安全運転を損なうのではと疑問に思っている。用事を終えて、帰りの電車でも同様の対応であった。UXというとtangible(有形の、触れる)な対象物に対する体験が思い起こさせるが、このような精神的(intangible:無形の、実体のない)な体験もある。たまたま、市内の古本屋さんで購入した『朝日新聞社編、日本の百年企業、朝日新聞、2011年』を車内で読んでいたら、この伊予鉄道のことが紹介されてあった。この路面電車の利用者は、マイカーの普及により激減したが、バリアフリー化や接客態度の向上などの対策を取り、利用者の減少に歯止めがかかったと紹介されてあった。ハードに対するソフトの重要性を痛感した。

 一方、tangibleな製品として、今治タオルを例に挙げることができる。この今治のタオルの特徴は、吸水性の良さにあり、UXとしてはその肌触りの良さである。今治タオルは一時、海外の安いタオルに押され、その打開策としてブランド戦略を採用することとなったのである。安心、安全、高品質という訴求点を明確にし、ブランドを構築し、成功を収めている。UXとしての肌触りの良さは、機能性のある心地よい今治タオルというブランドを下支えしている。

 tangibleあるいはintangibleな体験をした後、体験者は、①非日常性の感覚、②獲得の感覚(何かを得た後の感覚)、③タスク後に得られる感覚、④利便性の感覚、⑤憧れの感覚、⑥五感から得られる感覚、があり、その後、喜び、驚きや興奮につながるという知見を学生と共にアンケートから抽出した。以上述べた感覚以外にも様々な感覚があるかもしれないが、主だった感覚はこのような種類だろうと考えている。

関連記事一覧