第42回 さまざまな配慮

2014.01.20 山岡 俊樹 先生

 図1を見てほしい。地下鉄のプラットホームにある点状ブロックに、1本の凸状の線が加えられてある。この線は盲人がホームからの転落を避けるための配慮である。この線がないとどちら側がホームの端か分からないためである。

 
 我々の身の回りには様々な配慮が埋め込まれている。図2は目薬の容器であるが、指に当たる蓋の側面部分が凹状になっており、開け閉めを気持ちよく行える。所謂、人間工学上の改良なのだが、こうした小さい工夫が重要である。

 
 図3の行列の位置表示はちょっとした気遣いである。こういう表示がないとユーザは各自の判断で並ぶので、いろいろ問題を引き起こす。

 
 一方、もう少し配慮があってもよい例がある。新大阪駅の新幹線から乗り換えのため在来線へ通過する自動改札機で切符の取り忘れのため、駅員がマイクを使って、「切符を取ってください」と大きな音でまくし立てている。よーく考えるとこの自動改札機は機能が不十分で、取り忘れの顧客のために何も対応ができていない。そのため、駅員が大きな声で叫んでいるのである。そうならば、顧客が通過する際、切符を取り忘れた場合、通過を阻止するためバーを開けないで、閉じたままにすれば、顧客は気がつくであろう。

 
 図1と図3の例の様な配慮がないと、係員が来て大きな声で、危ないですよ。あるいはちゃんと並んでください、といった声を張り上げるかも知れない。人間-機械系(HMI)でインタフェースが不十分だとその不足部分を音声や係員の行動で対応している。これは以前紹介したHMIの5側面の運用的側面の対応である。ATMや病院の精算機では大抵、係員がそのそばに立っていて、ユーザが操作できない場合、彼等がサポートしてくれる。

 今述べたのは人間-機械系であるが、人間-人間系の場合はどうであろうか?例えば、ある施設のお土産・弁当売り場で、顧客とサービス提供者(販売員)の関係をみると、販売員は盛んに、「―――は如何でしょうか」と声をかけている。この状況を人間-機械系に置き換えて、考えてみると面白いことに気がつく。機械に相当するお土産・弁当が顧客とのインタフェースが十分である場合、販売員は声を出さなくとも良いのかもしれない。つまり、その商品がブランド化し、顧客がほしがっているならば、販売員が声を出さずとも顧客は列を作るであろう。確かに、ここにある米国の有名なコーヒ-チェーンのお店や地元で有名なお店では呼び込みをしていなかった。あるいは,ブランド化せずとも展示ディスプレーが斬新であれば、顧客は興味を持ってアプローチしてくるだろう。ということは特徴のない、または特徴があってもPR不足で、展示方法が平凡だと顧客を引きつけられないので、大きな声で呼び込みをしているという構造が理解できる。然し、この大きな声によりその場が活気づくので一概に否定はできないが、静かに購入したい顧客にとって配慮の無い場となっている。

関連記事一覧