第65回 温かいデザイン(41) サービスデザイン

2022.2.28 山岡 俊樹 先生

 知識と経験があまりないのだが、年を取るとともに知識と経験は豊富になり、的確な判断力を発揮できるようになる。判断力のある人は、知識と体験をその人の個人の中にとどめておくのではなく前号で知識どうしは経験により結びつけられると述べた。入社したてのビジネスマンは、それらを社会構築情報の中に位置づけし、構造化している。つまり、自分の得た知識と体験が社会の中でどの程度なものか認識しているのだ。TVの番組でコメンテーターが社会の事象について解説しているが、優秀なコメントをするのは事象を構造的にとらえている人である。

 知識と体験が結びついて知識となる。例えば、自転車の乗り方がそうであろう。自転車の知識だけでなく、自転車が傾いたらこのようにバランスをとるなどの体験が結びついて自転車の乗り方の基本的な知識となる。このような自転車の基本的な乗り方をマスターすると場合によっては、遠距離用あるいは競技用の自転車の乗り方をさらにマスターすることもできる。ここでも自転車の乗り方に階層構造を見ることができる。

 ところで、西洋と日本の鋸がなぜ形状、使い方が違うのであろうか?推測であるが、西洋の方は、道具を持つときのグリップを優先し、日本の方は自由な使い方を優先したのではないかと思われる。前腕を水平にし、人差し指から小指の4指と親指を曲げて直径20mm程度の棒を保持したとき、前に押した方が動作は楽である。このような観点から西洋の鋸は前に押す操作方式になったと思われる。現在売られていないが、OXOのブレッドナイフ(図1)も同様のデザインである。一方、日本の方は様々な使い方を想定しているようで、水平、垂直方向にも使えるデザインとなっている。このような構造になっているので、微妙な力入れ具合をできるようにするためには、押すのではなく引いた方が効率的である。人間工学的に前腕と手が曲がらない西洋式の方が、人にやさしいデザインであるが、日本の方は多様な使い方を優先している。この考え方は西洋の単機能のフォーク、ナイフに対して、日本の方は箸ですべて処理する多用途の考え方である。このような道具に対する基本的な考え方は、風土や社会の仕組みから影響を受けている。

 このように知識と体験を結合させる際、属しているその文化の価値観が影響しているのがわかる。この知識と体験は結合して、方法という知識にまとまる(図2)。例えば、人間の身体に合わせて機器のデザインをするには、①無理のない姿勢、②操作時に必要な力、③操作具とのフィット性の知識(法則)を知っていれば、人にやさしいデザインが可能となる。これらの情報は70デザイン項目としてまとめてあるので、拙著、デザイン人間工学,共立出版,2014を参考にされたい。これらの法則はモノ・コト作りの専門家に必要な知識だと考えている。

 以上は、モノ・コト作りの話だけでなく、社会規範も同様で法体系、道徳なども同様に構造化されている。

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