第61回 温かいデザイン(37) サービスデザイン

2021.10.29 山岡 俊樹 先生

 目的→制約条件→構造について、その構造について考察し、様々なケースを考えたいと思う。

 そもそも目的を決めるということは、無限大の情報空間の中から目的の情報を切り取ることである。例えば、「自宅を持つ」という目的に関して、目的の中の自宅という制約条件により関連情報が抽出される。次に、住宅を持つという主体を明確にしなければならない。自宅を持ちたいという人の属性を明確にする必要がある。ここでは40代のサラリーマンにしておこう。40代のサラリーマンが住宅を持ちたいという制約条件が明確になる。そうするとその人物像の特性から、ある程度の預貯金があり、企業では中核の業務を担っているとの漠然としたイメージ像を手に入れることができる。そのサラリーマンのオフィスが、東京の港区にあるならば、その目的を達成する様々な情報が絞られる。それは、通勤可能な時間、かかる費用、住む環境などである。これらの情報はその目的から導き出される情報である。このあたりで常識的な住居に関する情報が絞り込まれる。更に、絞りこむには、そのサラリーマンの住居に対する方針、つまりコンセプトを明確にしなければならない。このあたりで、コンセプトにより具体的に絞り込まれる。この場合、本人の預貯金が少なく、あまりお金をかけたくないが広い住空間を希望し、環境や通勤時間のウエイトが低ければ、郊外のマンションという選択肢が一番妥当ということになる。その結果、通勤時間が遠い面積の広い郊外型のマンションという構造が絞り込まれる(下図にて参照)。

 目的からそれに包含される制約条件を基に絞り込むことができるが、一般的な解しか求められない。制約条件の一つであるコンセプトを決めることにより、具体的に収斂させることができる。コンセプトは目的を達成する主体の方針である。

 このアルゴリズムに似ているのが、階層化意思決定法であるAHP(Analytic Hierarchy Process)である。この方法は、階層構造の最上位のある目的の下の階層に評価基準、さらにその下の階層に代替案が配置され、目的に関する評価基準により代替案が選ばれるというアルゴリズムである。この評価基準が制約条件、代替案が仕様であり、構造と考えることもできる。

 以上の考えをまとめると、目的→制約条件→構造のプロセスにコンセプトの必要性が分かる。目的→制約条件→構造のフレームでは、ある程度の一般的な情報まで絞り込むことができるが、更に絞り込むにはこのフレームの途中でコンセプトにより行なわれなければならない。

 このフレームは様々な事象にも活用できる。

(1)曖昧な指示

 お母さんが小学生の子供に1000円を渡して、食パンを買ってくるように頼んだ場合、どうなるのであろうか?お母さんは1斤頼んだつもりであるが、その子供は食パンが好きなので、子供は2斤購入したかもしれない。目的は食パンを購入することであり、制約条件は1斤購入することである。この目的と制約条件を明確にすることにより、子供の行う行為(構造)は厳密に定まってくる。更に厳密に言えば、お店の指定や食パンの銘柄の指定も制約条件となる。

 この厳密に情報を伝えることは、様々なビジネスシーンでも同様である。ビジネスでも、目的→制約条件→構造のフレームによるコミュニケーションや意思決定が重要である。

(2)制約条件を無視したデザイン

 使い勝手の悪い製品や建築の例を収集して考察すると、制約条件を検討していない例がほとんどである。ある県立美術館の資料室に金属製のイスが置かれてあった。子供も使うのに、かなり重いイスであった。座面も金属の板で、座ると冷たく感じる問題をどう理解したらいいのだろうか。美術館では美術の鑑賞が目的であり、多様な人々に対応することが制約条件である。このことにより、美術館のハード・ソフト面の制約事項が定まる。その中の一つがイスの条件で、そのため常識的には、木製、軽量などの制約条件が定まる。そのような制約条件の下で、美術館のコンセプトにより美術館の構成要素(建物の構造・外観、展示方針、インテリアなどの仕様)が具体的に定まる。

 

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