第47回 物語性について考える(2)

2014.06.25 山岡 俊樹 先生

 昨年7月、台湾の台中市で開催された国際会議に学生と一緒に発表に出かけた。その日の大会スケジュールが終わり、夕食をどこで食べるかネットで調べていたら、宮原眼科という店があった。日本名の面白そうな店なので、タクシーを飛ばして行ってみると、1927年にできた病院を改築して、今風のレストランとなっており、お土産とアイスクリームを販売していた。

 そこで、2階のレストランに入るとネオモダン風のなかなか趣味のよいインテリアであった。食事を済ませて、1階のお土産売り場に行くと、図書館風のインテリアで、記念スタンプを押せるなどのユーザエクスペリエンス(ユーザ体験)を生じさせるような工夫が施されてあった。ここで、宮原眼科という名前が印刷されたコーヒーカップを思わず購入してしまった。通常、海外でコーヒーカップを購入することはないのだが、この名前が気に入って購入した。帰国後、たまたま、同時期に台南にある国立成功大学に留学していたゼミの学生に確認したところ、台湾でも話題となったお店で、彼も同級生と一緒に台南から車で食事に行ったとか。

 物語性を製品やシステムに加えることにより、我々はそれらに意味を感じるようになる。単なる製品、システムを超えた親しみ、共感を得る対象物として認識するようになる。製品やシステムという機能の塊の存在から、ユーザにとって意味ある存在へと変化するのである。ブランドは正しく物語性のカテゴリーに包含される。物語を生成させる方法として、時間を感じさせるもの、つまり歴史のあるオブジェクトを活用、流用するか、あるいは人工的に物語を作り埋め込んでゆくことが考えられる。この宮原眼科というお店は、名前と建物を流用して成功に導いていた。他の例では、納豆の容器は通常発泡スチロールであるが、藁で包むと昔から使われていた素材のため、物語性を感じる。人工的に物語を作ることは、製品にかかわる事項、例えば、製品開発の秘話、考え方、信頼性を打ち出してPRすることであろう。物語性は、ある意味で製品やシステムを通じて、メーカが訴えたいストリーとも言える。物語性はブランドと同じく、保守点検して、色褪せないように配慮しなければならない。つまり、物語性のマネージメントが必要である。東京ディズニ―ランドは非日常の物語性を提供する場であるが、飽きられず来場客が増加しているということは、時代とともに変化させてゆくマネージメントの成果であろう。 

 

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