第10回 世の中の動向、ファッションを観察する(1)

2010.11.17 山岡 俊樹 先生

 我々の行動を規定しているものの一つが環境である。下図を見てほしい。
 

 A地点からB地点に行くには、直線を引いてその通り行けば、短時間に行ける。しかし、途中、3つの池があるので、それらを避けながら上図の矢印のようにB地点に行かねばならない。我々はあまり気が付いていないが、我々の行動は環境から影響を受けているのを認識する必要がある。この件は、プラトンの洞窟の比喩とも一脈を通じている。今回、紹介する事例は上図の人間の行動を規定している矢印を推定する方法を述べる。

 観察工学により、世の中の動向、デザインやファッションを観察して、それらの潮流や予測を行うことができる。手順は以下の通りである。

(1)目的を決める
(2)観察対象物(システム)を決定する
(3)環境、使用文脈から最適な観察対象物(システム)を絞り込む

  絞り込む基準は、次の通りである。
  1.代表的な対象物である
    潮流や予測を調べるので代表的な対象物であることが必要である
  2.通常の環境、使用文脈から外れる特異な対象物である
    これは、通常と異なる事象であり、新しい動きを意味する場合もあるので対象として観察する
(4)観察する
  前述の基準から幅広く採取する。
(5)得られた情報を生み出している背後の様々な価値、考え方を類推する
(6)類推した価値や考え方をグループ化して、構造化し、潮流を推測する

 

 事例として、表参道と吉祥寺におけるファッション、デザイン、建築や街の様子を観察対象とし、2009年9月に実施した。表的な対象物と通常とは異なる事象を手がかりとして観察した。

(1)目的を決める
  ファッション、デザインや建築の潮流を探るのが目的である。
(2)観察対象物(システム)を決定する
  表参道と吉祥寺におけるファッション、デザイン、建築や街の様子を観察対象とする。
(3)環境、使用文脈から最適な観察対象物(システム)を特定し観察する
  1.代表的な対象物や2.通常の環境、使用文脈から外れる特異な対象物を観察した。
(4)観察する
(5)得られた情報を生み出している様々な価値、考え方を類推する

  以下に得られた情報の一部とその背後にある価値観、考え方を示す。
  ・吉祥寺では自転車が多く使われていた→エコ、健康志向
  ・表参道では、ネクタイ着用者が非着用者の約半分程度→エコ志向
  ・ルーズファッション(シャツを外に出す)→脱束縛:自由志向
  ・ボトムスは黒系、トップスは白系で、高コントラスト→自己主張
  ・小さいが個性的なお店(吉祥寺)→自己主張
  ・帽子の着用 →個性の演出
  ・ノスタルジックなお店(1960年代の商品の販売)で木の床、木製の棚
   →脱モダニズム、自然回帰
  ・リュックサック、たすきがけの鞄の使用者増加→両手の開放、自由化
  ・レギンス着用の女性→活動、行動の脱制約化、自由化
  ・靴の多様化、カジュアルの靴の増加→個性化、自由化
  ・ブーツの着用→脱束縛:自由志向、個性の演出
  他
(6)類推した価値や考え方をグループ化して、構造化し、潮流を推測する
  グループ化の際、直感でまとめていく。量的に情報処理を行う場合、マトリックスの列頭に
  類推した価値や考え方、行頭にオブジェクトを配して、該当するセルが関係があれば1、
  無ければ0を布置する。このデータからクラスター分析やコレスポンデンス分析を行い、
  データをグループ化し解釈を加える。

 事例では、類似した価値や考え方を直感でグループ化し構造化した。その結果として、エコ、個性化、脱束縛:自由志向、健康志向などのキーワードを抽出することができた。これらの時代を表すキーワード(時代の潮流)からデザインや製品開発するときのベクトルとして参考にすることができる。

吉祥寺の雑貨のセレクトショップにて、しゃれた自転車が売られてあった

吉祥寺で見つけた個性的なレストラン


表参道で食事をしたイタリアンレストランの床や階段は木製であった

 

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