第1回 身体モデル

2016.06.27 山岡 俊樹 先生

 ものごとを理解する際、往々にしてその表層の理解に留まる場合が多い。これでは十分把握したことにならないので、構造的に捉えなければならない。製品のユーザビリティ評価を行うとき、製品の問題点をモニターに指摘してもらっているが、これはその製品の表層として現れるユーザビリティの問題点を抽出しているに過ぎない。ワークショップなども同様で、現状のシステム・製品の問題点や改善点を指摘したり、あるいはあるべき姿、理想像などを述べたりしている。悪くはないが、その問題点やその意見・展望の本質をつかむことができるのであろうか?なぜ、問題点などがあるのか、その根本原因を探らねばならないし、なぜその理想像なのか考える必要性がある。

 この根本原因や理想像を探る際の手掛かりとなるのが、システム・製品の様々な面に影響を与える人間側のモデルを考えることである。つまり、人間の特性を表すモデルに適合するようにシステム・製品の形状、提示情報構造や価値を決めることである。モデルには3種類あり、主に身体面に係る身体モデル、主に情報面に係るメンタルモデル及びその価値を決めるサービスモデルである。

 今回はこの身体モデルについて考えてみる。

 下図の(A)と(B)のアイロンを見てほしい。(A)の方は持ち手が前傾しており、(B)の方が逆に後傾している。どちらのデザインが使い易いだろうか?

 手の写真は自然に握ったときの筆ペンの傾きである。これが自然な手・腕の傾きであり、手・腕の身体モデルである。そうするとこの手・腕の傾きに合うアイロンの持ち手の(B)を選べばよいということになる。昔、ある家庭のアイロン操作の観察をした際、主婦が(A)タイプのアイロンの矢印のところを押すと操作が楽になると述べていた。すぐに気が付いたが、(A)タイプの場合、手がねじれて使いづらいため矢印で示した取手の端部を押して操作をしていたのであった。

 椅子の背もたれの場合は体幹の形状、傾きに対応できるようにし、操作ボタンの押される部分の形状は、押す指の形状(凸)から適合するように凹状の形状にすればよい。

 このように身体と接する部分は、身体モデルに適合するように製品や道具の形状を決めれば良い。この原則を知っているとさまざまなオブジェクトを観察する際、その形状の妥当性を判断することができる。

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