第8回 システム・サービスのフレームワークの把握
2017.01.27 山岡 俊樹 先生
システムやサービスの骨組み(フレームワーク)を構造的視点から構築する方法を述べたい。まず、そのシステムなりサービスの方向を示す必要がある。その方向を定めた後、その構成内容を検討する。
(1)方向を決める
方向を決めるのは、目的、目標を定めることである。当然、目的、目標はそのシステムやサービスを運用する組織の理念の中に包含される。
1)目的
5W1H1F(function)+期待の8つの視点に基づいて、目的を決定する。
①誰が、②何を、③何時、④どこで、⑤なぜ、⑥どうやって、⑦機能は、⑧期待は
2)目標
目的で決めたことを基に、下記の12項目のうち、必要な項目を使って目標を決める。目的は抽象的、質的であるのに対して、目標は具体的、量的である。
①機能性、②信頼性、③拡張性、④効率性、⑤安全性、⑥ユーザビリティ、⑦楽しさ、⑧費用、⑨生産性、⑩メンテナンス、⑪組織、⑫人的資源(モチベーション、対応力<サービス提供者の気配り、適切な対応、態度>、知識量、経験など)
(2)人間と機械・システムとの役割分担
人間とシステムあるいは人間との役割分担を、その目的・目標に従って決める。
①人間(利用者)対機械・システム
目的・目標に基づき、人間と機械の仕事の分担を決めることである。
②人間(顧客)対人間(サービス提供者)
顧客とサービス提供者の作業の分担を決めることである。サービスは顧客とサービス提供者との協力の下で成立するので、顧客にどこまでの作業・対応をお願いするのか決める。
(3)制約条件を検討する
システムやサービスに係る制約条件を把握するか、再検討し、制約条件を見直すことにより新しい要求事項を抽出できる。以下の時空間の制約を検討する。
①社会・文化・経済的制約、②空間的制約、③時間的制約、④製品・システムに係る制約、⑤人間に係る制約(思考、感情、身体)やシステム制約をあたえる5つの制約条件(①インプットの制約、②アウトプットの制約、③達成手段の制約、④システムの範囲による制約、⑤社会・文化・経済的制約)。また制約条件の強弱についても検討する。
(4)構成要素の明確化と構造化を行う
目的・目標、役割分担、制約条件から抽出される大まかなシステムやサービスの価値を明確化する。さらにその価値の具現化、価値の共有の視点からも検討する。価値の共有とは、単に一方通行の価値の提供ではなく、提供者側と被提供者がお互いに価値を共有するという意味である。つまり、価値とその具現化、共有化の視点と「目的―手段」の関係から、目的・目標、役割分担、制約条件から絞り込まれた情報を分解してゆき、システムやサービスの構成要素の明確化と構造化を行うのである。
例えば、眼鏡店ならば、価値として「眼鏡を選ぶ楽しみの提供」とした場合、顧客の希望を聞きながら眼鏡のデザインや仕様を絞り込んでいき、顧客は最適なメガネを選択できるシステムを考えてみる。通常、中・高級店でもせいぜい眼鏡を選んだあとの調整作業は30分足らずで終わってしまい、15万円程度の眼鏡を購入してもその価値がなかなか実感として生じない。その理由は店員のスキルの問題、単に一方的な販売などが原因である。少なくとも、眼鏡とのフィッティングに1時間ぐらい時間をかけ、店員と顧客がお互いに満足するような価値共有関係が必要であろう。このような具体的なイメージを作ることができれば、分解が可能となり、眼鏡店の構成要素が明確化・構造化される。
以上のフレームは著者が提唱している「汎用システムデザインプロセス」の「システムの概要」のステップに基づいて展開したものである。詳細は拙著、『サービスデザイン』(共立出版)にて確認してほしい。
出典:共立出版(2016)サービスデザイン―フレームワークと事例で学ぶサービス構築― 山岡俊樹/著
※先生のご所属は執筆当時のものです。
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