第62回 温かいデザイン(38) サービスデザイン

2021.11.30 山岡 俊樹 先生

 モノ・システムはもともとその制約を持っている。無限大の情報空間の中にモノ・システムが存在することは、制約に依存している。その制約により、モノ・システムが特定されるからである。モノ・システムの制約条件について発言すると制約条件は考えないほうが良いという意見を聞く。そのことに関して、以下の図1を考えた。

 

 昔、東京の某美術館で講演会があり、インテリアデザイナーの話を聞いた。このデザイナー曰く、日曜日に開催される骨董市で家具を購入し、椅子に仕立てていると言っていた。このデザイナーは椅子をアートとして考えているようで、形としては面白そうであるが、座る機能としてはいささか問題があった。従来の椅子の概念を図1の制約条件(A)の中に包含されると、アートとしての椅子は制約条件(B)に相当する。従来の椅子もアートの椅子も椅子という大枠の制約条件(Y)の中で存在している。また、喫茶店で天井から紐をつるしたブランコの椅子(制約条件(C))を見たことがある。このように椅子に新しい意味付けすることにより、様々な椅子のデザインを考えることができる。制約条件(B)(C)はユニークな椅子で大枠の制約条件(Y)の範疇に内包されるが、商品化という制約条件(X)から外れてしまい、モノとして存在するが、商品としては無理である。

 前月号で、ある県立美術館の資料室に金属製の椅子が置かれてあった例を紹介した。この金属製の椅子は、商品の制約条件(X)をはみ出ているのがわかる。図書館における資料室の椅子という大枠の制約条件の下でデザインを考えた場合、様々な制約条件を考えて多様な椅子が考案されるだろう。この商品の制約条件(X)の範囲は、時代の価値観(制約条件)により、広がったり、狭くなったりする。先のブランコの椅子も、美術館を遊んで楽しい場所と再定義されれば、商品の制約条件も変わるので、美術館の資料室で活用が可能になるだろう。

 よくいわれる制約条件をなくして考えろというのは、図1の発想者自身が持つ制約条件をなくして発想しろという意味である。椅子の例ならば、椅子は脚があり、背もたれがあるという制約を自分で決めてしまい、その束縛から脱した椅子のアイディアを発想することができない。この制約条件をなくして発想しろというのは、モノ・システムに新しい意味付けを行うことにより、新しい存在を提案することであり、商品の制約条件(X)を広げることでもある。

 著者が今までに述べてきた制約条件を考えて発想しろというのは、図1の商品の制約条件(X)を広げて発想しろという意味で述べてきたものである。

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