第114回 「全体・部分・時間」を活用した観察方法について(2)

2026.3.31 山岡 俊樹 先生

 「全体・部分・時間」の視点から対象物やシステムを観察すると、通常気がつかないことも、この視点が手がかりとなって気がつく。

 最近、ある地方都市で学会があり、発表のため出かけた。
 鉄道駅前にバスの発着所があり、駅の2階にあるペデストリアンデッキから下に降りるとバス停に行くことができる。ここの2階部分からバス停に降りる階段まで転落防止用の柵が連続しており、図1に示すようなデザインであった。

 特段深く観察していたわけではないが、気になった事項を示す。


部分情報
①丸いステンレス製のパイプを支えるπのような形状の支柱が気になった。(図1、2)
 →なぜ、支柱はストレートの丸棒ではダメなのか?このデザインではパイプを曲げ、更に直線のパイプと溶接をしているので手間暇がかかって高コストとなっている。造形的に支柱群は変化し模様(パターン)となっているが、その効果はどうなのだろうか?
②太く丸いステンレス製のパイプは何のためにあるのか?
 勿論、転落防止であるがペデストリアンデッキの境界線を示しているのだろう。
③階段の踏面が石なので滑りそうで、更に手すりが無いので不安であった。(図1)
 →足腰の弱った高齢者には危険のように思われる。
④2階部分でバス乗り場の番号表示板が無い。(図2)
 2階にあるバス乗り場の案内板で確認後、その近くに行けばバス乗り場の表示があると思っていたところ、無いので分からなくなり再度案内板を確認した。通常、下に降りるとき、階段の手前のところにバス乗り場の番号が表示されている。
 →なぜ、このような不便なことをするのだろうか?

図1 階段部分

 以上がペデストリアンデッキの観察情報(部分情報)である。


全体情報
 それでは、なぜこのようなデザイン思想で行ったのだろうか(全体の視点)?多分、アピアランス(見た目)優先で行ったのではないだろうか?太い丸棒はアクセントラインとしてデザインされたようである。この考えはバス乗り場表示板が2階のペデストリアンデッキに無いという理由にも相通じる。要するにすっきりとしたペデストリアンデッキにしたかったのかもしれない。しかし、π型の複雑な支柱にしているのは、単調さを避けるために造形の模様としてデザインされたのであろう。

 もし、雨の日に高齢者がこの階段の踏面で足を滑らせ転倒するということも考えられる。その観点からも階段には手すりが必須である。
 調べてみると約40年前に作られたようなので、以上のような配慮が足りなかったのかもしれない。

図2 転落防止、バス乗り場の案内が無い


図3 手すり部分

 図3は今回の駅と商業施設をつなぐ通路にあった手すりである。子供用と大人用の2種類の手すりが準備されている。


時間情報
 時間に関して、昔作られていても、時代の要請からアクセシビリティやインクルーシブデザインなどの最新の考え方を取り入れ、使いやすく、安全なペデストリアンデッキに改造していくことが望まれる。そのためには世の中の価値観の変化にも対応できる構造になっているのが望ましい。事故が起きてから対策するのではなく、日々改善していく姿勢が必要ではないだろうか。また、メンテナンスをどう考えていくかも重要な視点である。

 完成時は斬新なデザインであった建築物が、数年後にはサビたり、汚れだして目も当てられない状況になっているのをよく目にする。製品も同様である。建築家の浦辺鎮太郎(うらべ しずたろう、1909年-1991年)は反モダン建築を志した建築家で、倉敷国際ホテルやアイビースクエアなどが有名である。彼の建築は10年後が完成だと本で読んだことがあり、時間を設計要素に取り込んでいる。

 時間という重要な軸をデザイン要件に入れて、メンテナンスフリーにするとか、簡単なメンテナンスができるように配慮するなどが今後検討されるべきであろう。メンテナンスを行っていくと製品や建築物に対して愛着が生じる。時間をそこまで組み入れてデザインするのが重要である。



※先生のご所属は執筆当時のものです。

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